ボタンの花に貝殻が似ていることから、香川、兵庫、岡山あたりでボタンガキと呼ばれるイタボガキは、フランスガキに似たカキです。昭和50年頃までは、ごく普通にとれたカキです。戦後、養殖マガキが普及するまで、香川でカキといえばこのボタンガキのことでした。砂泥地や砂地に生息し、カキこぎ網と呼ばれる底びき網で冬場に漁獲していました。分布域は瀬戸内海が中心で、香川と兵庫が著名でした。しかし、今は県内で年間10個も水揚げされないほど激減し、兵庫県も同様で、全国的にもごく稀にしかとれないようです。
昔、ノリやマガキの養殖が未発達で、冬場の漁業が少なかった時代、ボタンガキは重要な漁獲物で、大正5年から昭和12年まで、水産試験場で養殖や天然採苗の試験をしたこともあります。しかし、戦後はマガキ養殖が発達し、ボタンガキは顧みられることも少なくなり、知らぬまに絶滅の危機に瀕しています。
身は大きく、味は渋みがあるといわれますが、そうでもなく、マガキよりもクセは少ない。食べ方は、生で酢ガキにしたり、殻ごと焼いてレモン汁をしぼって食べたり、カキ飯、フライなどにもされました。
殻は、胡粉(ごふん)と呼ばれる白色顔料になります。胡粉は、伝統的な人形の塗りや、日本画などに欠かせない材料で、日本美の白は胡粉によるものです。現在も京都では昔入荷したボタンガキを加工して胡粉が作られています。
平成14年度、漁業者から親貝の提供を受け、水産試験場で人工採苗ができました。量的にはまだまだで、さらに研究が必要です。フランスガキに似たこの貝の味を取り戻すため、日本の伝統技法の伝承ため、是非とも成功させたいものです。 |