イギスは、瀬戸内海沿岸に古くから伝わるイギスという海藻を使った料理で、現在でも県内のごく一部の漁村で伝承されています。テングサを使うトコロテンに似ていますが、海藻を全部煮溶かすところが異なります。
海藻のイギスは、大潮の干潮線からそれよりやや深いところに分布し、岩にはえた他の短い海藻に付着して生長し、また、波などで岩から離れたあとも、転石の間などで生長します。採取に適した時期は7〜8月ですが、夏遅くなると、他の動植物の付着が多くなり、後々手間がかかります。
採取したイギスは、夏の強い日差しですぐに乾燥させます。乾燥が不十分だとイギスを腐らせてしまいます。さらに雑藻などを取り除きながら水洗いと天日乾燥を3〜4回繰り返して、クリーム色になったものを保存します。たくさんとったつもりでも、乾燥するとこれだけかと思うほど少なくなります。テングサに比べ、手間がかかり、雑藻を取り除くごとに量が減っていくことから、「貧乏草」と呼ぶところもあります。
イギスをたくときは、米のぬか汁や大豆のゆで汁を用いて、煮溶かします。トコロテンに比べかなり多くの海藻が必要です。煮溶かして、冷まして固まったものをからし酢味噌や酢醤油で食べたり、煮溶かした最後に具やだし汁で味付けをし、同様に固めて、いただきます。煮溶かしに失敗することもよくあり、経験も必要です。手間と経験の必要なこの料理は、商品とするにはもったいないほどで、大事な家族やお客への一品です。 |