本州四国三架橋時代の展望に関する調査について

平成10年3月  政策企画総室

 
はじめに        

第1章 瀬戸大橋の架橋効果について        

第2章 本四三架橋時代における地域の変化        

第3章 本四三架橋時代の展望と課題        

おわりに        

参  考


はじめに

 昭和63年4月に本県のみならず四国の人々にとって長年の悲願であり世紀のプロジェクトと呼ばれた瀬戸大橋が開通してから、早くも10年が経過しようとしている。これにより本州と四国が初めて道路と鉄道で結ばれ、海路に比べ、大幅な時間短縮や利便性の向上が図られ、本県をはじめ四国の産業、経済や住民生活などに大きな効果をもたらしているところである。
 また、本年4月には明石海峡大橋が開通し、さらに来年春には尾道・今治ルートが完成することにより、瀬戸内に陸続きの環状ルートが形成され、いよいよ本州四国三架橋時代の到来を迎えることとなり、行政区域を越えた様々な分野における広域的な交流や連携の活発化が促進されるとともに、地域間競争の激化が予想されるところである。
 こうした中、これら三つの橋の中央に位置することとなる本県としては、現在、このような大きな環境変化を積極的に受け止め、21世紀初頭における香川の将来像を展望した上で県勢の持続的発展を遂げていくためには、今後、いかなる方策を講じていくべきかが重要な課題となっている。
 本調査では、まず第1章で、昭和63年の瀬戸大橋開通から現時点までの主な架橋効果についてとりまとめを行った。
 次に第2章では、本州四国三架橋時代において、これに関係の深い地域を取り巻く状況がどのように変化していくかを概観した後、地域の競争力をみる視点をいくつか抽出し、評価を行うとともに企業インタビューを行い、激化する地域間競争のもとで本県の四国地域における位置は変動するのかどうか検討を行った。
 そして最後に第3章では、これらの分析・検討の結果を踏まえ、本格的な本州四国三架橋時代となる21世紀初頭の本県の将来像を展望するとともに本県が持続的発展を遂げていくための課題について検討を行った。
 なお、本調査で試みた本県の将来像の展望は、三架橋時代の変化を確めるための極く部分的な限られたものに過ぎず、次年度以降の各政策研究テーマの中で広がりを持った将来像を明らかにしていきたいと考えている。

1章 瀬戸大橋の架橋効果について

 一般的に公共事業の投資効果をみる場合、事業効果と施設効果に大別されることから、本稿においてもこれと同様な視点で検討することとした。
 事業効果とは、瀬戸大橋及びその周辺への建設投資が産業間の取引構造を通じて広範な産業分野における生産や売上の増加に波及し、地域の付加価値、雇用、所得、税収を増加させるもののことである。しかしながら、この効果は、一時的・短期的なものであることから、本稿では、効果が比較的長期間にわたって現れるところの施設効果についてのみ、みていくこととしたい。
 施設効果については、直接効果と波及効果に分けられ、これらは瀬戸大橋が供用する限り継続的に現れる効果であるとも言える。
 まず直接効果についてであるが、これは、端的に言うと、瀬戸大橋の架橋や周辺における道路整備などにより、「今まで船を使わないと行けなかった所に鉄道や車を使って行けるようになる」といった地点間の交通経路や交通手段を変化させるような効果のことを言う。そしてこれにより、「これまでよりも短時間で行ける、あるいは安く行ける」といった効果も生み、交通の経済性や利便性を向上させる結果、「地点間を移動する人々の数が増える、物の量が増える、移動が楽になる、安全に丁寧に運べる、高価な物も運びやすい」といった人流、物流の量や質を向上させるという効果を生み出すことになる。これらも含め、直接効果ということもできる。
 また、このような直接効果は、生活者にとって「買物や観光、レジャーの圏域を広げる、遠距離にある医療機関でも治療を受けられる」といった変化を生み出し、企業にとっては「遠くまで運び安いので生産量を増やせる、広がった市場をターゲットにした新しい商品やサービスを提供できる」といった効果を与えるなど、企業や生活者の行動を変化させる効果へとつながっていく。さらには、これらの行動の変化が、地域社会の変化といった面へも波及していくこととなる。こうした効果のことを波及効果と呼んでいる。
 なお、瀬戸大橋の架橋効果を論じる場合、単に橋が整備されただけでなく、これとつながる高速交通ネットワークが同時に整備されたことも大きなインパクトとなっていることから、瀬戸大橋架橋後における各種高速交通体系の整備のうち主なものについて、整理をしておくこととする。
S63.4 瀬戸大橋開通(瀬戸中央自動車道〈坂出〜早島〉、JR瀬戸大橋線)
H元.12 新高松空港開港
H4.4 四国横断自動車道 高松西IC〜善通寺IC 開通
H5.10 山陽自動車道 福山〜河内間 開通
H5.12 山陽自動車道 備前〜岡山間 開通
H9.2 四国縦貫自動車道 川内〜伊予間 開通
H9.3 中国横断自動車道 岡山総社〜北房間 開通
H9.12 山陽自動車道 山陽姫路東〜三木小野 開通
H10.4 明石海峡大橋開通(予定)

(1) 直接効果

 瀬戸大橋の架橋により、本州と四国は新たに鉄道、道路で直接に結ばれることとなり、これに伴い瀬戸大橋と接続する高速道路網の拡充、本州と四国を直接結ぶ鉄道ダイヤや、フェリー航路の統廃合、再編成等が行われ、地点間の交通経路や交通手段は大きく変化した。
 ここではまず、経済性や効率性の観点から、架橋による本州・四国間の「所要時間の短縮効果」や「交通信頼性の向上効果」、さらには「交通経費の節約効果」がどの程度になっているかを検証した上で、実際の「交通流動の変化」、つまり人や物の流れがどう変わったかをみることとしたい。

@ 所要時間の短縮

 瀬戸大橋の開通や関連する高速交通ネットワークの整備に伴い、利用者にとっては、より所要時間の短い交通経路や交通手段の選択が可能となった。その結果、表−1(四国4県都と岡山市との所要時間)に示すように、道路、鉄道による四国と本州との連絡時間は大幅に短縮されており、今後、明石海峡大橋や尾道・今治ルートの開通、さらには関連する高速道路網の整備の進展に伴い、ますます時間短縮効果が増大していくことが期待されている。
 こうした時間短縮効果により、一般的には、産業面において、資材や労働力の調達コストの低減や販売コストの削減、販路の拡大といった効果をもたらすことが考えられる一方、住民の生活面では、これにより節約された時間が、余暇時間や自由時間に振り向けられるといった効果を生むことが考えられる。

A 交通信頼性の向上

 瀬戸大橋の開通に伴い、霧や悪天候などによる本州・四国間の通行不能な時間が大幅に減少したため、本州四国間の連絡の確実性と信頼性が飛躍的に向上している。これは表−2に示すように、海上輸送(フェリー等)の時代における欠航時間(停船勧告された時間)が1.92時間であったのに対し、瀬戸大橋が開通してからの8年間(昭和63年度〜平成7年度)における瀬戸中央自動車道の通行止め時間が平均6.3時間と約3分の1に減少していることからも明らかである。

B 交通経費の節約

 高速道路等の整備は、交通に係る所要時間の短縮を促すと同時に、自動車利用者にとっては交通経路の短縮と走行速度の増加をもたらし、その結果、燃料消費量の節約、車両の減価償却費の減少等による走行経費の減少をもたらすことが一般的に言われている。
 表−3は大型貨物車の高松市から大阪市までの交通経費の比較であるが、瀬戸大橋を経由するルートはフェリー利用に比べ所要交通経費は高いが、時間の短縮効果が見られる。

C 交通流動の変化
ア)  人の流れの変化
(A)  本州・四国間の輸送人員        

 本州・四国間の人の往来は、瀬戸大橋が開通する昭和62年度以前、その交通手段としては海上輸送(宇高連絡船、フェリー等)と航空機によるものに限られていたが、瀬戸大橋が開通し、新たに陸上、鉄道という交通手段が加わったことにより、また先述の、所要時間の短縮効果や交通信頼性の向上などが図られたことにより、大きな変化をもたらしている。        
 表−4は、毎年、四国運輸局が発表している「本州・四国間の旅客及び貨物の動向」から一部推計作業を加え、作成したものであるが、これを見ると本州・四国間の旅客移動を各交通手段別に集計した総数は、瀬戸大橋開通前の昭和62年度に年間約3,150万人であったものが、開通直後の昭和63年度には約1.5倍の約4,600万人という規模に膨れ上がっている。        
 このことから、新たな輸送手段として登場した瀬戸中央自動車道の利用だけでなく、JR瀬戸大橋線も宇高連絡船時代に比べ利用者が倍増するなど、瀬戸大橋が開通し、四国と本州を結ぶ輸送パイプが強化されたことによって、人の流れが活発になったことがわかる。        
 しかしながら、その後は、関連する高速道路網(本州側及び四国内)や空港(高松空港など)の整備が進んできたにもかかわらず、移動者数は伸び悩んでいる状況にあり、このことは、もはや、瀬戸大橋の開通効果を直接に期待する時代が過ぎ去り、いかにこれを利活用して交流人口を増やす努力をすべき時代に入ってきているかと言うことを、物語っているのではないかと思われる。        
 なお、以下個別に述べるが、各利用交通手段別の人の流れの推移を見てみると、フェリーなどの海上輸送は減少傾向にあり、瀬戸大橋や航空機利用が増えつつあることがわかる。

(B)  瀬戸大橋車両通行量        

 瀬戸中央自動車道の通行台数の推移をみると、平成元年度に一旦減少したものの、その後は順調に増加しており、平成8年度には5,552千台となっている(図−1参照)。また、一日平均通行量も15,210台と開通時に比べ40.5%増加している。

(C)  JR瀬戸大橋線利用者数        

 瀬戸大橋開通以前における四国と本州を結ぶ主要な交通手段であった宇高連絡船に比べ輸送能力が高く、利用料金の面において瀬戸中央自動車道と比べ割安なJR瀬戸大橋線の利用者は、瀬戸大橋が開通した昭和63年度には10,997千人に達した。        
 その後は、翌年度の平成元年度に、9,879千人と前年度に比べ8%程度、利用者数が減少するとともに、平成6年度は阪神・淡路大震災の影響を受け、前年度比で9.3%も利用客数が減少し、再び1千万人台の大台を割り込んだものの、平成7年度には再び10,225千人と1千万人を超えており、現在は、これまでのピークであった昭和63年度の10,997千人には及ばないものの、依然として高い水準で推移している(図−3参照)。なお、平成9年11月には、開業以来の利用者数が1億人を突破した。

(D)  フェリー・旅客船の利用状況        

 本四間におけるフェリー・旅客船については、瀬戸大橋開通の影響を受け、航路によって差はあるものの、その利用者数・利用台数ともに、全体でみると昭和62年度から瀬戸大橋が開通した63年度にかけては一旦大きく減少したが、その後は、ゆるやかな減少傾向となっている(図−4、5、6参照)。

(E)  航空機利用者数        

 四国の4空港の乗降客の推移を東京・大阪便の合計で見てみると、平成元年12月に開港した新しい高松空港における発着機材の大型化等もあって、年々、その利用者数は増加傾向にある(図−7参照)。        
 なお、本県と東京及び大阪方面との旅客の移動手段を、瀬戸大橋開通前と現在で比べてみると、表−5にあるように、東京方面との移動手段は航空機のシェアが増しているのに対し、大阪方面は逆にJRのシェアが増してきていることがわかる。

イ) 物の流れの変化

 JRを含む全輸送機関による輸送トン数の推移をみた場合、四国発着の貨物輸送量は、表−6及び図−8でもわかるとおり、瀬戸大橋開通後、高い水準で推移してきており、開通前の昭和62年度と比べ、平成7年度では34.7%と全国の同時期における伸び率である15.6%を大きく上回っている。また、そのシェアも開通前(4.7%)に比べて0.8ポイント上昇している(5.5%)。さらに、四国域外地域との貨物の流動量の伸びについては、19.5%と、全国の伸びを上回る伸び率となっていることから、四国の貨物流動量全体がこのように大きく伸びたのは、瀬戸大橋開通による影響や、この間における四国内の高速交通ネットワークの整備促進によるためではないかと考えられる。
 なお、利用交通機関別では、まず、JR瀬戸大橋線経由の四国発の貨物量の推移をみると、昭和50年代は一貫して大きな変化は見られない。瀬戸大橋開通前の昭和62年度の宇高連絡船による貨物量は245千トンであったが、開通した年の昭和63年度においては378千トンとなり、対前年度比で54.1%増加した。これは、四国から本州まで輸送時間が大幅に短縮されたことが大きな要因となったと考えられる。その後、平成4年度までは増加を続けたが、対前年度比の伸び率は鈍化し、平成5年度及び大震災の影響を受けた平成6年度に関しては、対前年度比でマイナスとなっている。しかし、平成8年度は調査年度中で取扱量が最大となり、559千トンになっている(図−9参照)。
 また、本四間貨物輸送の主要な手段となっているトラック等大型車のフェリー利用と瀬戸大橋利用の推移を見てみると、図−10のとおりであるが、フェリー利用については横ばいで推移し、瀬戸大橋利用は、昭和63年度に比べ平成8年度は2.5倍ほどに大きく増えている。

(2) 波及効果

 本節では、前節で述べたところの瀬戸大橋架橋に伴う直接効果などが本県の産業、経済、住民の生活など幅広い分野へ波及し、これにより生じているものと見られる多くの効果のうち、主なものをとりあげてみることとした。

@ 総 生 産

 まず瀬戸大橋架橋前後における四国4県の県内総生産額の推移を比較すると、表−7にあるとおり、高知県を除き他3県では、全国平均の伸びを上回っており、特に本県の伸び率は高くなっていることがわかる。
 また、これまでの県内総生産額の伸び率の推移をみると、架橋前まで本県の伸び率は、総じて全国平均を下回っていたが、その後、バブル経済や、折りからの瀬戸大橋の架橋効果も相まって、昭和63年度から平成元年度にかけては、全国平均の伸びを大きく上回ることとなった(図−11参照)。しかしながら、その後は、本県の伸び率も全国平均の伸びと同様減少傾向にある。
 次に、これを業種別に全国平均の伸びと比較しながらみてみると、第1次産業は減少しているものの、第2次、第3次産業については軒並み伸び率が増加しており、特にサービス業に関しては、架橋前に比べ83.39%と大きな伸び率になっている(図−12参照)ほか、鉱業、製造業、卸売・小売業、運輸・通信業でも伸びが著しくなっていることがわかる。

A 工場立地

 四国内における工場立地の状況については、昭和50年代はオイルショックに伴う景気後退などにより立地件数は総じて低迷し、臨海部、内陸部ともに立地件数であまり大きな差は見られなかったが、立地面積については、臨海部のウェイトが高く特に、昭和60年前後の伸びは大きいものがあった。
 その後、瀬戸大橋が開通したことや景気拡大期が重なったことで、昭和63年度は前年度に比べ件数、立地面積ともに内陸部を中心として大きく増加し、その後も企業の誘致が積極的に行われ、平成4年度までは立地件数、敷地面積ともに高い水準で推移した。
 これは、瀬戸大橋開通前には、本州・四国間の輸送は大部分を海運に頼っていたため、臨海部に工場を立地させる傾向が強かったのに対し、橋が開通し広域的な高速交通ネットワークが整備されるに伴い、製品や部品の輸送を道路に頼ることが可能となり、高速道路IC周辺など内陸部への立地メリットが高まったことから、内陸部への立地が増えたことによるものと考えられる。
 しかしながら、平成5年度以降は、景気後退の影響もあり、内陸部、臨海部ともに立地件数が低迷し、その内訳も四国外からの立地企業はほとんどなくなったが、その後、内陸部を中心として四国外の企業も含め、立地企業が増加してくるようになっている(図−13、図−14参照)。

B 観   光

 瀬戸大橋開通前の昭和62年以降の本県への観光客の入り込み数を図−15でみてみると、開通前の昭和62年に4,904千人であった入り込み客数が、瀬戸大橋が開通した昭和63年には10,351千人と前年に比べ倍増していることがわかる。これは瀬戸大橋が開通し、橋自体の観光資源としての魅力も相まって、空前の四国への観光ブームをきたしたことが大きく影響したものと思われる。その後は、この反動もあってか減少し、平成3年に、県内で大型テーマパークが開園したこともあって再び増加に転じたが、それ以降は年々入り込み客数の減少傾向が続き、平成8年になり、わずかながら増加するようになっている状況である。平成8年の入り込み客数は、7,197千人と、瀬戸大橋開通の昭和63年の7割程度ではあるが、開通前と比べると、依然として高い水準で推移しており、図−16にもあるように、瀬戸大橋開通後は、四国4県の中で本県への観光客の入り込み数が最も多い状況が続いていることを考え合わせると、全国からの観光客の入り込みが期待できる観光資源として瀬戸大橋が本県の観光を支える柱の1つとなっていることがわかる。
 また、図−17の栗林公園への地域別団体入園者数の割合をみると、昭和63年以降は、中部地方以東の遠隔地からの観光客が増加傾向にあり、その占める割合が上昇しつつあることがわかり、このことから、瀬戸大橋の開通により、観光地としての本県の地位が向上したことがうかがえる。
 本県における宿泊施設数やその収容人員の推移は、瀬戸大橋開通前の昭和62年と開通年である昭和63年を比べると客室数、収容人員、軒数ともに大きく増加しているものの、平成元年以降はそれほど大きな増加はみられていない(図−18参照)。

C 生活行動の変化

 瀬戸大橋の開通は、県民活動にも変化をもたらしている。
 JR瀬戸大橋線で定期券を利用した通勤・通学者の推移を見ると、開通前の宇高連絡船時代には1日あたりわずか21人しかいなかったものが、現時点(平成9年5月時点)では2,770人と大幅に増加している。これは、現在の同線の年間利用者数が約1千万人であり、これを単純に1日当たりに換算すると3万人弱であるということを考えると、毎日、同線を利用する人の10人に1人は、通勤・通学者と言えることになり、このことから、瀬戸大橋を介し、県境を越えた生活圏の拡がりが着実に進みつつあることがうかがえる(表−8、表−9図−19、図−20参照)。

瀬戸大橋に関する調査として、次のようなものがある。


第2章 本四三架橋時代における地域の変化

(1) 等時間圏域の変化

@ 面   積

 まず、本四三架橋時代の到来により、直接的に表れてくる変化ともいえる等時間圏域の変化について、現況と比較してみることとした。
 表10、表11は自動車を利用して、三橋に関連する中四国地方の各県庁所在都市である高松市、徳島市、松山市、高知市、岡山市、広島市の各都市から、一般的に日帰り行動圏と言われている1時間〜3時間(1時間:通勤・通学や買物など、2時間:出張などビジネス、3時間:レジャー、観光など)で到着できる市町村数とその面積、いわゆる等時間圏について、現況と三架橋時代(現在予定されている高規格幹線道路等がすべて完成された状態)とで比較したものである。
 これによると、現況、将来ともに、カバーするエリアが最も大きいのは岡山市を中心とした場合となっており、高松市を中心とした場合はこれに次ぐ規模となっている。なお、増加率でみると、徳島市を中心とした場合の伸びが最も大きくなっている。
 なお、次のページから150ページまでは、こうした変化をよりわかりやすくするため、各都市ごとに現況と将来における等時間圏のカバーエリアを地図にプロットしてみた。

A 人   口

 次に、本節では、前節で説明した等時間圏の変化に基づき、各都市がカバーする1時間圏(通勤、通学、買物)、2時間圏(出張、ビジネス)、3時間圏(レジャー、観光)の各圏域内における人口の合計を下記の表にまとめてみた。
 これによると、現況と将来ともに、1時間圏から3時間圏のすべてにわたって最も多く人口を抱えるのは岡山市を中心とした場合となっており、これに続くのが高松市を中心とした場合(ただし、将来の3時間圏では、徳島市を中心とした場合が上回ることとなる。)となっている。
 なお増加率でみると、明石海峡大橋の開通により近畿圏の一部を3時間圏に含むこととなる徳島市を中心とした場合の伸びが大きくなっている。
 次に、これを四国内に限定してみてみると、現状では、1時間圏から3時間圏すべてにわたって、高松市を中心とした場合が最も多くの人口を抱える状況になっている。なお将来の3時間圏に限っては、四国内の各都市に大きな差がなくなる結果となっていることがわかる。

(2) 瀬戸大橋の利用予測

 本節では、三架橋時代における人や物の流れの変化を知る手がかりとして、瀬戸大橋を利用する交通量がどのように推移していくのかを見るため、三架橋の供用を控え、利用料金の見直しを審議するために設置された本州四国連絡橋公団の経済委員会が平成9年7月に新たな利用料金案と同時に発表した、三橋の将来にわたる利用交通量予測について紹介しておくこととする。
 これによると、瀬戸大橋の通行量は、表−16にあるように、他の2橋の完成により、平成12年度(2000年度)を底として一時的に減少するものの、その後は再び増加に転じていくものと見られている。なお、参考までに、平成10年度以降適用されることになる本四三架橋の利用料金を表−17に、また、瀬戸大橋開通後、現在に至るまでの本四間の自動車通行台数の推移を表−18に掲載することとした。
 

(3) 地域の競争力の変化

 これまで1〜2節で、三架橋時代における等時間圏や等時間圏人口(交流可能性人口)、さらには、橋上の交通量の見通しなど、関係地域を取り巻く環境変化について述べてきたが、本節では、地域間の競争力がどのように変化するかについてみておくこととしたい。

@ 地域の競争力を評価する視点

 まず、地域の競争力を評価する視点を抽出するために、企業や生活者(住民)など地域社会を構成する各主体が、今後、どのように行動しようとしているのかを整理しておきたい。
ア)  企業の動き
(A)  生産機能の地方への立地意向        

 最近の我が国における生産機能の立地件数の推移を見ると、平成8年に若干回復の気配を見せているものの、基調としては平成元年をピークとして減少傾向にあることがわかる(図−27参照)。        
 特に、最近開設されている工場は、食品等を中心とした市場近接型生活関連産業が多く、1980年代において地方への生産機能の立地を牽引した加工組立型産業の工場の立地は少なくなってきている(図−28)。

(B)  単一企業による垂直的フルライン型生産から、複数企業の連携によるネットワーク型生産への移行        

 近年、国際的な競争下にある国内企業においては、コストの削減等を行うため、一部の生産工程を他企業にアウトソーシングする動きが見られ始めており、新たな商品開発を行うにあたっても、全てを自社で開発するのではなく、他の企業が保有する技術や製品を活用しながら製品化する動きがでてきている。        
 こうしたことから、今後は、企業間の関係が系列企業という言葉に代表されるような垂直的フルライン型から、必要に応じて系列以外の企業とも連携し合うネットワーク型へ移行していくものとみられ、それぞれの企業が保有する独自の技術が、企業の発展を左右する一つの要素になってくるものと考えられる。

(C)  変化が予想される営業・サービス拠点の立地形態        

 我が国全体として急激な経済成長が期待できない中、特に、国際的規模の競争を展開している国内企業では、グローバルスタンダード(世界標準)型の経営が強く求められるようになってきており、これら企業においては、これまでの主要な経営戦略であった「マーケットシェアの拡大」や「新製品比率の拡大」から、「ROI(投下資本利益率)の維持・向上」を強く意識するようになってきている(図−30参照)。こうしたことから、今後は、投資に対する利益の最大化を中心にした経営に移行する企業が多くなってくるのではないかとみられる。        
 このことは、利益の源泉となる営業・サービス拠点の地方への新設意向は依然として高いものの(図−31参照)、効率性等の観点から、こうした拠点の機能が各地方における交通環境やマーケットの変化などにより、今後、再編整備される可能性があることを物語っているのではないかと思われる。

(D)  効率化が進む物流機能        

 近年、一部企業においては、市場ニーズに合致した製品を的確、かつ迅速に供給するため、市場に近接した地域において物流機能を立地させる等、効率性に優れた物流システムを構築する動きが見られる。また、世界の物流拠点との連携も念頭に置いた新しい物流システムの構築に向けたニーズも高まりつつある。        
 このため、地域間のアクセス性が大きく変化する三架橋時代においては、こうした物流機能の立地について注目していく必要がある。

イ)  生活者(住民)の動き
(A) 新しいワークスタイルの顕在化        

 近年、情報通信技術の急激な進歩の中で、アメリカなどにおいてその普及が著しいSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)と呼ばれるような在宅勤務や遠隔地勤務といった形の就業形態が現れている。日本サテライトオフィス協会の試算によると、平成7年時点における我が国の総テレワーク(在宅勤務)人口は約94.7万人と言われており、これが2000年には約217万人〜375万人にまで増加すると予測されている。        
 こうしたことから、これまで、勤務する企業の立地場所に強く影響を受けていた就業者の居住地の選択が、今後、多角的な視点から行われる可能性が高まってくることが予想される。(図−33参照)

(B)  多様な余暇ニーズの充足を求めた活動範囲の拡大        

 第1章でも述べたが、瀬戸大橋の開通により四国を訪れる観光客が大きく増加したように、近年、交通基盤の整備進展や余暇需要の多様化などに伴い、生活者の活動範囲は急速に拡大している。このことは、各県が発表している観光客数のデータをみると、平成3年から平成7年にかけて、全国の46都道府県中(大阪府は調査を実施していない)、28の県において観光客数が増加していることからもわかる。        
 こうしたことから、今後、観光やレジャーなどの余暇活動による交流人口はますます増加していくことが予想される。

(C)  新しいボリュームゾーンが台頭する。        

 我が国の総人口が21世紀初頭において減少局面に移行することは確実視されており、これに伴って高齢化社会が到来することとなる。        
 また、第二次ベビーブーマーに代表される趣味等を生活の中心とするライフスタイルを持った層が、社会の中核として機能する年齢に近づいてきている。        
 この結果、21世紀初頭には、援護を要しない高齢者や第二次ベビーブーマーを中心に、積極的に余暇を楽しむ傾向が定着し、地域の持つ余暇的機能が評価されるようになるものと考えられる。(図−34参照)

ウ) 評価の視点

 以上のように、企業や生活者の新しい動きを見てくる中で、企業は、最適な活動の場を求めて、その立地場所を選択するという傾向を強めており、また、住民(生活者)のレベルでも地域を越えた広い舞台の中での活動が増えてくるのではないかということが予想される。
 このことは、企業や住民(生活者)が、立地や居住に際し、従前に比べより積極的に地域を選択する時代がくることを物語っており、これからは、地域の持つ生活環境の質、自然や文化の豊かさ、知的資本の充実度、生活基盤の効率性、交流基盤の質の高さなど多面的な魅力が大きく問われることになってくるのではないかと思われる。
 こうしたことから、今後の地域の競争力を評価するには、まず、企業活動の面からみると、低廉な立地コストは言うまでもなく、企業間の連携が活発化するための研究開発などの事業支援機能の集積、交通インフラの整備、さらには大きなマーケットの存在などがその視点となってくるものと思われ、また、生活者の立場からみると、地域の有する高次都市機能やレジャー機能等が積極的に評価されるという視点が考えられる。

A 地域の競争力の評価
ア)  企業活動の面からみた地域の競争力
(A)  立地コスト        

 企業が地方へ立地する際、地価、賃料等がコスト面で大きな要因となると考えられる。        
 まず、商業地の地価水準をその平均価格でみると、広島市が最も高く、これに高知市が続き、高松市は3番目の水準になっている。オフィス市場における賃料については、資料が不足しているので単純な比較はできないが、高松市が、広島に次ぐ高さになっており、空室率では、高松市が一番低い結果となっており、オフィス需要の高さを示している(表−19参照)。        
 また、工場用地の価格をみてみると、愛媛県が一番高くなっている。香川県は、四国の中で2番目の高さとなっている(表−20参照)。

(B)  等時間圏内における産業の集積        

 次に、ネットワーク型産業構造を形成していく上で、また、物流の対象となる貨物の発生や集積度合いなどの点において各地域のもつポテンシャルを比較するため、各都市の1時間圏における産業の集積状況をみるため、製造品出荷額のデータをもとに分析する。        
 これによると、現況及び将来ともに、岡山市を中心とした場合、高松市を中心とした場合の順に出荷額が高くなっている(表−21参照)。        
 また、この範囲を四国内に限定してみると、四国内で最も産業集積の高い地域である東予地方が、高松市の1時間圏域に含まれるため、現状及び将来ともに、高松市を中心とする場合が大きくなっている(表−22参照)。

(C)  事業支援機能の集積        

 事業所における各種業務において申請等を行う上で必要となり、各種情報の発信機能を持つと見られる国の出先機関、とりわけそのうち地方統括機関の立地数を見ると、これまでブロック地域の拠点としてその役割を果たしてきた広島市、高松市の集積が圧倒的に高くなっていることがわかる(図−35参照)。        
 また、ネットワーク型産業構造を形成していく上で、企業独自の研究開発機能を高めていく必要が増してくると思われるが、こうした産業の高度化等を支援する機能を持つとみられている大学や公設の試験研究機関の立地状況及び研究開発部門を有する企業数を表−23でみると、四国では愛媛県への立地が最も多く、徳島県、香川県がそれに次いでいる。

(D)  国内アクセス        

 図−36、図−37は、各地域ごとに東京へのアクセス時間、コストについて比較したものであるが、特にコスト面において航空機と鉄道を利用した場合には、最も費用がかかる都市と最も安い都市との差が5000円以内であるのに対し、自動車を利用した場合には、橋を利用する四国内の都市が対岸の本州の都市に比べ、不利な状況にある。        
 また、表−24で四国内各都市のアクセス時間を比較してみると、現状においては高松市が圧倒的に優位な立場にあることがわかる。さらに、表−25で各空港の国内定期路線数をみると、広島空港、高松空港、松山空港において路線数が多いことがわかる。

(E)  海外アクセス        

 まず、空路による海外アクセスを見ると、以下のような状況となっており、他の国内における国際空港を経由しないで直接海外とアクセスできる都市の数から見れば広島空港が優位にある(表−26参照)。        
 また、海路によるアクセスについては、広島港が5航路11便を有するなど、この圏域の都市では最も多くの航路を持ち、優位な状況にある(表−27参照)。

 
イ)  生活者の立場から見た地域の競争力
(A)  立地コスト        

 生活者(住民)が地域に居住していく上で、まず、問題となってくるのが住宅コストである。このため、各地域の住宅地の地価水準を見ると、広島市が最も高く、四国内の各都市はこれに続く水準となっており、岡山市が最も低い水準となっている(表−28、図−38参照)。

(B)  大規模小売店舗の立地状況        

 次に、生活者(住民)が、地域において快適な日常生活を営んでいく上で、その利便性を計るための指標として商業機能が考えられる。        
 中でも最近のモータリゼーションの進展に伴う人々の購買形態の変化に合わせた形で立地が進んでいる大型小売店舗を四国内の各県について比較してみると、本県は、愛媛県に次いで多くの店舗数と面積を有しており、店舗面積を人口千人当たりにしてみると、4県では最も大きい規模となっている(表−29参照)。

(C)  都市基盤施設の整備水準        

 次に、生活者(住民)が地域で生活する上で、重要となってくるのが都市機能のレベルである。ここでは、都市公園と下水道整備に着目して比較してみた(表−30参照)。        
 これによると、本県の都市基盤施設の整備水準は、愛媛県に次いで、四国内においては総じて高い状況にあるが、広島県や岡山県と比較すると十分な整備がなされているとは言い難い状況にある。

(D)  ホール数        

 次に、地域が持つアメニティ機能はどうか、という観点で比較してみた。まず、イベントやコンサート等の文化活動の拠点となる大規模ホール数を見ると、広島県に次ぎ、愛媛県に多くあり、本県は岡山県に次いで4番目である。また、その内容を見ると、広島県が7,000人規模のホールを有する点等から、比較的高次な機能を擁していることが窺える(図−39参照)。

(E)  文化資源集積        

 次に、文化資源の集積を、人口10万人当たりの県内図書館数、蔵書数、博物館・美術館数、動・植物園数、水族館数からみてみると、総じて四国地方の水準が高く、本県は、ほぼ中位に位置する(表−31参照)。

(F)  テーマパークの立地        

 次に、各都市からの1時間圏に立地するテーマパーク数を見ると、岡山市に続いて、高松市は現状においても、また将来(現在予定されている高規格幹線道路等がすべて整備された状態)においても第2位に位置している。

(G)  観光資源集積        

 次に、観光資源の集積を、対象となる都市が立地する県について見ると、世界的な集客が可能である特A級資源を有する県は、広島県(宮島、原爆ドーム)となっており、全国的な集客が可能と考えられるA級資源以上の集積を見ると、岡山県、高知県、広島県の順となっている。また、身近なレジャー資源を含めたC級資源以上で見れば、愛媛県が多く、次いで、広島県、岡山県、香川県となっている(表−32参照)。

(H)  生活現代化指標        

 最後に、住民生活の現代化、つまり生活行動(私的消費)がどこまで高密度化しているかを、全国平均を100として、情報化率、教育化率、モビリティー(機動性、流動性)化率、ファッション化率、生活現代化率など、各県ごとに指標で比較している「生活現代化指標」というものを用いてみてみることにしたい。        
 この指標のみでもって、簡単に各地域の居住水準の優劣を決めることはできないが、表−33を見る限りにおいては、中四国地方における本県の各指標水準は総じて高いことがわかった。

ウ) 地域の競争力の変化

 以上のことから、本県は、現状においては中四国内の各地域と比較して、競争力という観点から考えれば、中位に位置するといえるが、四国内においては、文化資源やアメニティー機能などの面において劣るものの、総じて優位性があると思われる。
 しかし、三架橋時代の到来によって、今まで以上にあらゆる分野において地域間の交流が活発になる一方、地域間競争の激化が予想されることから、四国内における本県の位置が変化してくることも考えられる。

(4) 三架橋が企業活動に与える影響(企業ヒアリング調査結果)

 これまで、各種資料をもとに、一部推計も交えながら、三架橋時代における地域の変化や地域間の競争力といった点についてみてきたが、こうした交通体系の変革に直面し、経済活動を営んでいる企業においては、今後、実際にどのような対応をしていこうとしているのか。この点について検証を行うため、昨年(平成9年)12月にヒヤリング調査を実施した。
 支店経済と言われているように、本県には数多くの四国を統括する支店等が立地している。これら支店等は、今後、どのような対応をとっていこうとしているのか。こうした点を中心に、各業種ごとの主要な企業のうち、四国を統括する支店支社等10社を対象としてヒアリングを実施した。
 以下、その結果をまとめたものである。

@ 生産機能

 既に本県内に立地している生産拠点については、地元での雇用や地域経済との密接な関係等から容易にその立地を変更することはないであろうとのことであった。

A 支店支社機能

ア) 法人を対象としたface to face型営業拠点

 高松市は、国の出先機関や民間大規模事業所を頂点とした事業所の集積が形成されており、こうした事業所集積は、他の四国内の都市にはあまり見られず、工事、資材、設備等の発注を行うことのできる権限を持った事業所が多いことや、四国内の主な企業の事業所が集中していること等から、ビジネスチャンスを獲得しやすい特性を有している。
 また、四国内企業からの受注や公共事業の受注等に際しては、四国内への拠点の有無が前提となることも多く、営業戦略上、高松市に四国を統轄する機能を立地させることが最も効率的な構造が発生しており、四国内の他都市への距離感がいい位置にある。
 このため、三架橋時代が到来しても国の出先機関や民間大規模事業所の移転が無い限り高松市へのこの機能の集積は継続される可能性が高い。また、新規立地に関しても同様の立地形態を示すと考えられ、四国内の拠点としての高松市(本県)の機能は継続すると考えられるとのことであった。

イ) 居住者を対象としたマスマーケティング型営業拠点

 高松市に立地する事業所の中には、本県さらには四国内の居住者を対象とした商品(食品、家電、日用雑貨等)の営業拠点としての機能を持つものも立地している。こういった性格を持った事業所の立地は、事業所集積を対象とするものではなく、居住者によって形成されるマーケットを対象としたものであり、マーケットが存在する限りその機能は立地すると考えられる。
 また、その立地についてはマーケットへの近接性を重視する傾向にあり、特に、保守、サービスを行う拠点は増加する傾向にある。
 このため、現在、高松市をはじめとする本県に立地しているこの機能を持った支店支社は、三架橋時代が到来してもその立地に変化は見られないとのことであった。

B 物流機能

ア) 定期的供給が行われる商品を取り扱うもの

 企業の物流機能の中で、大型コンピュータや重電関連商品等に代表される、納期が明確に決まっており比較的余裕のあるものや、注文生産が行われる商品を取り扱うものについては、商品自体の単価が高く、在庫を持つ必要も無いことから、工場からの直接輸送もしくは西日本で一カ所程度の物流拠点を整備することで十分対応が可能であり、輸送についても、主に、船舶、トラック等が利用されているが、納品地と工場、物流拠点の位置関係によってその都度決定されている。
 そのため、四国内への新たな物流拠点整備のニーズは低いとのことであった。

イ) 不定期な供給が行われる商品を取り扱うもの

 家電関連商品、日用品、食料品等については、発注から納品までの期間が短く(発注の翌日には商品が必要)、商品の単価が安いことから、輸送コストに大きな影響を与える橋の輸送料を削減するためにまとまったロットでの輸送を行うとともに、不定期的な発注に対応するためにある程度の在庫を確保しておく必要がある。
 このため、これらの商品を取り扱う物流拠点は今後も四国内での立地が志向され、その際には、立地コスト、輸送コスト等を要因とする立地が展開される可能性があるのではないかとのことであった。

ウ) 宅配便等の物流拠点

 宅配便等に代表される物流拠点については、発生する貨物量が多い地域(現在、四国内での貨物発生量は高松市周辺が最も多い状況にある。)に物流拠点を立地させており、四国内での貨物のとりまとめが必要なものは、四国全体のロットをまとめなければ(最小の輸送単位である)トラックの輸送量を確保できないものに限定されていることから、三架橋時代が到来しても物流拠点が急激に移転することは考えにくいとのことであった。
 また、企業が個別に発注する貨物の輸送については物流拠点を整備する必要はなく、三架橋時代になってもルートの選択性が高まる程度の影響しかないのではないかとの見方であった。

C 本四三架橋が本県に与える影響

 これまで行ってきた本四三架橋時代における「等時間圏域の変化」や「等時間圏人口(交流可能性人口)の変化」、また「橋上交通量の予測」や「地域間の競争力の将来展望」などの分析から、瀬戸大橋を介し一体的な地域となった対岸の中国地方の地域への目立ったストロー現象はみられず、地域間競争は激化するものの、本四三架橋時代になっても本県の四国における中枢拠点機能の維持発展を大きく妨げる環境変化が生じることはないのではないかと考えられる。
 一連の企業ヒヤリングの結果においても「三架橋時代になっても、本県の持つ既存の機能集積に与える影響は少ない」とみる意見が多かった。
 それはどういう理由からと言うと、「本県への各種機能の集積は、瀬戸大橋が開通する以前から、四国を統括する国の出先機関の立地や四国全体をエリアとする大規模事業所の本社機能等を背景として形成されてきたもので、これらの極端な統廃合や移転が無い限り三架橋時代が到来しても、各種機能の大きな分散は考えられない」ということであった。


第3章 本四三架橋時代の展望と課題

 本章では、これまでの調査・分析等を踏まえ、本調査研究の総まとめとして、21世紀初頭(本格的な本四三架橋時代)における本県の将来像を探った後、本県が持続的発展を遂げていくための課題を検討してみることとした。

(1) 本四三架橋時代(21世紀初頭)における本県の将来像

 第2章でみてきたところから、本四三架橋時代の到来により本州・四国間の人や物の流動は多様化し、四国内においては、高速道路の整備進展に伴い自動車交通による各県間のアクセス時間等に差が無くなり、地域間競争は激化するものの、本県が都市基盤の整備や文化資源、観光資源の活用等の施策を更に進展させるなどの条件のもと、総じて本県の果たしてきた四国の中枢拠点機能を維持発展できる可能性は高いと考えられる。
 以下では、本四三架橋時代後の2010年頃に視点を置き、本県の将来像を探ってみる。

@ 2010年の本県の人口、経済

 平成9年5月に発表された国立社会保障・人口問題研究所の都道府県別将来推計人口によると、2010年(平成22年)の我が国の人口は127,623千人となり、平成7年と比べ1.6%の増加となっているが、本県の場合は四国で最も遅く2000(平成12年)から2005年(平成17年)にかけて減少に転じるものの、2010年(平成22年)における人口は1,014千人となり、平成7年と比べると1.3%の減少となることが予測されている(表−34参照)。
 一方、老年人口をみてみると、戦後生まれの人々が老年人口に加わり始める2010年には全国ベースで28,126千人となり、総人口に占める割合は平成7年の14.6%から22.0%へと大きく上昇することとなる。本県においても245千人となり、人口に占める割合は平成7年の18.2%から24.2%へと上昇するものの、これまで全国より10年早く進んでいると言われた高齢化が、この頃には、多少、全国レベルの水準に近づいてくることが予想されている(表−35参照)。
 また、生産年齢人口(15歳〜64歳)については、2010年に全国ベースでは81,187千人と、平成7年に比べ7.0%の減少となり、その割合も69.5%から63.6%へと低下することが予測されており、本県においても678千人から626千人へと減少(7.7%減)し、その割合は66.1%から61.7%へと低下することとされている(表−36参照)。

注:今回使用したデータは公表されたものを参考にしており、県としては、別途独自の推計を予定している。

 次に、経済の状況についてみてみると、平成9年3月に出された産業構造審議会総合部会基本問題小委員会の中間とりまとめの中で、経済構造改革など一連の国における諸改革が実現した場合における我が国の経済成長率の今後の見通しが表−37のとおり示されているが、これによると概ね2025年までは年平均2〜3%程度の伸びで推移していくものと見込まれている。一方、本県の県内総生産の伸び率は、第1章の図−11表−38を見てわかるように、昭和60年代以降、全国の伸び率の変化と同様な傾向をたどっており、今後も全国の推移と同様な展開をしていくものと考えられる。

A 2010年における本県のプロジェクトの進捗状況

 本県が現在、取り組んでいる主なプロジェクトの進捗状況が、2010年頃にはどのようになっているか、現時点において以下のとおり予想することとしたい。
 まず、三大プロジェクトについてである。
 四国横断自動車道は、高松市内区間の13.3km及び津田〜鳴門間の36.2kmが供用され、高松市から高速道路を経由して直接、京阪神地域へのアクセスが可能となっており、また、高知県須崎以遠も延伸されている。愛媛県内においては、今治・小松自動車道の整備が進み、尾道・今治ルートとの接続がなされており、さらに、四国縦貫自動車道は、美馬〜川之江ジャンクション間が供用されているほか、愛媛県大洲以遠も延伸されている。このように、高速道路によって、四国の各県庁所在都市同士が結ばれ、それがさらに本四三架橋で本州側と結ばれることによって、自動車による都市間の移動が、よりスムーズに行える状況になっていることが見込まれる。
 次に、高松空港であるが、現在就航しているソウル路線に続き、アジアの都市を結ぶ新たな国際線が就航しているのではないかと予想される。また、高松空港へアクセスする地域高規格道路の高松空港道路(5km)及び高松環状道路の一部(4km)も完成し、高松西インターから空港までのアクセス時間の大幅な短縮が図られるようになっている。
 次に、瀬戸大橋の通行量であるが、第2章でみたように、日量約21,400台(平成8年度:15,210台)となっており、三架橋全体では、日量約61,600台となることが予想されている。
 次は、都市開発のプロジェクトについてである。
 サンポート高松は、2000年度(平成12年度)にはJR新高松駅(第1期計画)、港湾旅客ターミナル、駅前広場などが完成し、2001年度(平成13年度)には、JRのホテルが開業した後、2003年度(平成15年度)には、人工海浜、多目的広場、国の合同庁舎、シンボルタワーなどが完成しており、21世紀初頭には、新しい街の姿が明らかになってきているものと思われる。
 また、サンポート高松に接続するようになる琴電連続立体交差事業については、高松市中心市街地における交通阻害や地域分断の解消、さらにはJR高松駅との連絡に向けて整備が着々と進んでいる。
 このほかにも、中心市街地において再開発が進む一方、農業試験場跡地の再開発やセミナーパーク構想の推進によって、高松市郊外における各種拠点施設の整備が進んでいるものと思われる。
 次は、産業振興のプロジェクトについてである。
 緑豊かな丘陵地に出現した高松東ファクトリーパークは2000年度には完成し、進出した企業から、近くを走る四国横断自動車道や高松東道路を経由して、京阪神地域をはじめ本州地方への製品の出荷がなされている。
 香川インテリジェントパークでは、R&D施設が完成した後、この施設を中心に産学官の共同研究開発活動が行われている。さらに、香川大学工学部に大学院が開設され、同大学の地域共同研究センターなどもオープンし、本県における研究開発活動の拠点としての機能がますます充実しているものと思われる。
 農林水産業では、農業試験場の移転整備が行われ、バイオテクノロジーなどの先端技術を活用した高度な試験研究が積極的に推進され、生産性の高い特色のある香川型農業の確立に向けた先導的役割を果たすようになっている。また、新しい水産種苗供給施設の整備が進むなど、「つくり育てて売る漁業」のより一層の推進が図られているものと考えられる。
 最後に、快適な生活空間を創出するプロジェクトについてである。
 平成10年に一部開園する国営讃岐まんのう公園(全体面積350ha)の整備も進むなど、人と自然が共生する快適な環境を実現するための各種施設づくりが積極的に展開されているであろう。
 また、オフィス街に敷設される光ファイバーなど情報通信施設の整備進展に伴い、大都市圏との情報格差は現在と比べると格段に縮小されており、県内においても第2章で述べたようなSOHOがいたるところでみられるようになっているであろう。

B 新しい全国総合開発計画と本県

 先般(平成10年3月)策定された新しい全国総合開発計画においては、その計画期間を2010年〜2015年までと定め、深刻化の度合いを増してきている地球環境問題や少子化・高齢化・情報化の進展などの我が国を取り巻く諸情勢の変化、さらには人々の価値観や生活様式が多様化してきていることなどの状況を踏まえ、21世紀の新しい国土ビジョンを描いていこうとする観点から、経済的豊かさだけでなく精神的な豊かさにも重点を置いた、ゆとりと美しさに満ちた生活を支える国土づくりを進めていくことが提唱されている。
 また、この計画では、これまで効率重視の一極・一軸型の国土構造から、北東国土軸、日本海国土軸、太平洋新国土軸という3つの新しい国土軸の形成を図り、従来からの国土軸である太平洋ベルト地帯、いわゆる西日本国土軸の再生と合わせ、複数の国土軸からなる「多軸型国土構造」へと転換していくことにより、国土の均衡ある発展を目指していくこととし、その取り組みもこれまでの国主導型と違い、様々な主体の「参加と連携」のもと、「多自然居住地域の創造」、「大都市のリノベーション」、「地域連携軸の展開」、「広域国際交流圏の形成」の4つの戦略を掲げ、各種施策の推進を図っていくこととされている。具体的かつ特徴的な施策としては、地域の自立発展を促進するために、従来からある三大都市圏や地方中枢都市圏や、これに準ずる規模と機能を有する高松等の地方中核都市圏を「中枢拠点都市圏」として位置づけ、全国的なネットワークを図っていこうとしているほか、産業振興面では地域の内部から自立的に新しい産業の展開を進めるため、新しい産業の創出を図る観点から、ベンチャー企業の育成の促進や、特に、アジア諸国との積極的な交流に向け、地方中核都市を中心に空港や港湾の整備を推進するとともに、国土の隅々まで安定的で高度な情報通信網を張り巡らせる「情報活力空間」の構築などがあげられている。
 さらに、この計画においては、間近に迫った本州四国連絡橋3ルートの全線の完成やこれに関連する高速交通ネットワークの整備進展に伴い、地域全体のポテンシャルが高まっている中四国地域については、今後、こうした基盤整備の効果を最大限に生かしながら、国内外にわたる広域的連携型による発展を図っていく先導的な地域を目指していかなければならないとされている。
 こうしたことから、本県としては、産業、経済、文化はもとより、県民生活など幅広い分野で多くの効果が期待できるよう、広域的な視野に立ち、「西日本中央連携軸構想」をはじめとする他地域との多様な交流、連携を積極的に推進していくとともに、高次都市機能の集積の拠点、広域国際交流圏の拠点として「中枢拠点都市圏」に位置付けられた高松市において、サンポート高松をはじめとする高次都市機能の整備や中心市街地の活性化を図るほか、香川インテリジェントパークにおける各種研究機能の集積による産業の高度化支援などを進めることにより、中四国地域の他の中枢拠点都市圏との機能分担や連携のもと、広域国際交流圏の形成に努めていくことが期待されている。
 また、多自然居住地域の創造に向け、県内においても、こうした圏域の拠点となる都市の機能を高めるとともに、高度な生活基盤などの整備を進め、高齢化に対応した医療・福祉の充実、立地自由度の高い産業の育成、地域資源を生かした産業の活性化を図っていくことが重要とされている。
 さらには、自然環境の保全・回復や農林水産物の高付加価値化、災害に強い地域づくりや節水型社会の形成などの推進も必要とされている。

C 企業活動の変化

 本節の@で述べたように、我が国の人口は、近年の少子化傾向により伸びが鈍化してきており、21世紀初頭にピークを迎えた後、本格的な減少局面に入ることが見込まれている。また、高齢化も一層進み、これらに伴い経済成長率の低下が予想されるようになってきている。こうしたことを背景として、新しい全国総合開発計画においても述べられているように、近年、企業は最適な生活の場を求めて地域を選択するという傾向を強めてきており、地域の持つ知的資本の充実度、生活基盤の効率性、交流基盤の質の高さ、グローバルネットワークとの接続などの面が、積極的に評価されるようになる時代が到来するのではないかということが指摘されている。このため本四三架橋やこれに関連する高速交通体系の整備の進展に伴い、より一体的な地域となる本県を含む中四国地域においては、今後、ますますこうした企業の立地などをめぐっての地域間競争が激化してくることが予想されている。
 一方、第2章で述べたように、地域の一体感が強まってくる中四国地域においては、今後、企業間の交流・連携の機会が増え、例えば、1企業でフルライン型の製品化を行うのでなく各企業が持つ優れた技術を連携させて1つの製品を作り上げるという、複数の企業によるネットワーク型の生産活動の事例が本格的ではないが少しずつ現れ、こうした動きにあわせ、研究開発分野でも地域を超えた企業間の交流・連携が活発になってくるものと考えられる。また、物流機能については、取扱商品によって差はあるものの、効率化の観点から再編整備などの状況が一部においてみられるようになっているのではないかと考えられる。
 しかしながら、第2章で紹介した企業ヒアリングにおいて得られた多くの意見に代表されるように、本四三架橋時代になっても、物流ルートの変化等が生じるものの、これまで集積されてきた四国を統括する支店支社機能に大きな変化は生じないものとみられる。

D 生活者(住民)の行動変化

 本四三架橋やこれに関連する高速道路の整備進展に伴い、地域間の交通アクセスが飛躍的に向上することにより、今まで以上に住民の生活圏が広がりを見せてくるようになる。また、新しい全国総合開発計画においては「距離や移動に伴う障害が克服されると、住む場所や働いたり学んだりする場所の選択の幅が広がることとなり、自然や文化の豊かさを求めて人々の移動が見られるようになる。」ということが指摘されている。こうしたことから、例えば、第2章でも説明したように、本県においても、東京圏に次いで多くの事業所が存在している京阪神地域を就業地に持ち、居住は県内という生活スタイルをとる住民が一部に見られるし、恵まれた自然環境や適度に有している都市機能などに着目し、他地域からの高齢者の移住などが見られるようになってきているのではないだろうか。
 このように、21世紀初頭においては、就業による居住地選択の制約が薄れ、地域の持つ生活環境や利便性、さらにはアメニティといった点を重視した形での居住地選択を行う住民が増えるなど、本県においても経済的な豊かさとともに精神的な豊かさを味わうことができるゆとりと美しさに満ちた暮らしを求めて、移り住んでくる人々が見られるようになってきているものと思われる。

(2) 本県が持続的発展を遂げていくための課題

 さて、前節で本県の21世紀初頭における姿を概観してみたが、最後に、本県が、今後、持続的発展を遂げていく上での課題は何なのかについて検討することとしたい。
 本県が、長期的な展望に立ち、進むべき基本的方向とこれを実現する基本的方策を明らかにするために策定した県政運営の基本指針である「香川県21世紀長期構想(平成2年5月策定)」では、その基本目標を「都市的活力と田園の快適さの調和のとれた県土空間の形成」つまり「田園都市香川の形成」としており、前節で述べた新しい全国総合開発計画の基本理念である「経済的豊かさだけでなく精神的豊かさにも重点を置いた、ゆとりと美しさに満ちた生活を支える国土づくり」と軌を一にする部分が多い。また、その具体的な施策についても、「企業活動の支援」や「定住環境の整備」などといった観点から推進しているものが多く、前節で検討した21世紀初頭を見通した「企業や生活者(住民)の活動の変化」などにも適合したものとなっている。
 このため本県では、今後とも、これら施策の展開を図り、『県全体が田園の持つ「ゆとり」や「やすらぎ」と都市の持つ「利便性」や「活力」とを兼ね備えた田園都市香川の実現』を目指していかなければならないものと考える。
 次に、全国における四国の占有率を表−39で見てみると、面積は4.97%、人口は3.33%、経済力(県内総生産)は2.85%となっており、面積に比して人口が少なく、人口に比して経済力が弱いという状況になっている。また、人口や県内総生産の占有率についてのこれまでの推移を表−40で見てみると、人口の占有率は僅かながら減少傾向を続けているが、県内総生産の占有率は平成2〜3年に底をついて以来、その率は回復してきている。なお、表−41で県ごとの全国占有率を見ると、本県は他の3県に比べ、面積に比して人口の集中度が高く、人口に比して経済力もそれほど低くないことがわかる。
 本県はこれまで四国を統括する各種機能の集積効果により、四国全体の経済力を背景に、あるいはその恩恵を受ける形で発展を遂げてきたとも言え、本県の将来にわたる持続的発展は、四国全体のことを抜きには考えられない。また、第1章の瀬戸大橋の架橋効果から考えてみても、本四三架橋時代においては、その効果が四国全域に及び、四国全体の経済活動の拡大が多いに期待できるところである。
 このように見てくると、前節で述べたところの21世紀の交流新時代というか、地域間の大競争時代に向けて、四国全体が一丸となって取り組み、他地域と競争していける地域づくりを目指していくべきであり、四国全体の発展こそが本県の中枢拠点機能の拡充強化につながっていくものと考える。
 こうしたことから、四国全体の発展のために先導的な役割を果たし、四国全体のボトムアップを図っていくような施策展開に取り組んでいくことが必要であり、このためには、いかに本県を「四国全体の発展を意識した先導的な地域」としていけるかが課題である。本県としては既に、四国全体の発展を意識した先導的な事業として、「サンポート高松」や「香川インテリジェントパーク」などの整備事業に取り組んでいるが、今後は、今までにも増して、さらなる四国の発展を推進するための事業に取り組んでいかなければならない。
 さらに、新しい全国総合開発計画においては、各地域が世界に広く開かれ、独自性のある国際的役割を担い、東京等大都市に依存しない自立的な国際交流活動を可能とするため、中枢拠点都市圏又はその連携を核として地域ブロックを越える程度の地域的なまとまりからなる「広域国際交流圏」の形成が提唱されている。特に、従来からの西日本国土軸(太平洋ベルト地帯)に加え、新たに太平洋新国土軸と日本海国土軸を併せた3本の国土軸を横軸として、また、西日本中央連携軸をはじめT・TAT地域連携軸や中国四国地域連携軸など3本の連携軸を縦軸として持つこととなる中四国地域は、今後、国内外にわたる広域的連携型発展の先導的地域を目指し、この中で、四国地域は中国地域との機能分担と連携により一体的な発展を図りながら、広域国際交流圏を形成していくべきであるとされている。
 こうしたことから、本県としては、四国の各県との連携の強化を図っていくことはもとより、本四三架橋やこれに関連する高速交通体系の整備進展に伴い、今後ますます一体感が増してくる対岸の中国地域との連携・交流を深め、この地域における核となる魅力と活力にあふれる県土づくりに努めていかなければならないものと考える。

おわりに

 昭和63年4月10日に瀬戸大橋が開通し今年で満10年を迎えようとしており、4月5日には明石海峡大橋が開通し、いよいよ本四三架橋時代は目前に迫ってこようとしている。また、現在、本県が進めている県土づくりの指針である「香川県21世紀長期構想」による計画期間も、3年を残すばかりとなっている。
 本研究は、こうした時代の大きな節目をとらえ、これまでに瀬戸大橋開通が本県に与えた影響(効果)とか、本四三架橋時代に向けて本県が今後どのような対応方策を行っていくべきかをテーマとして、昨年度来、各種の分析や検討作業を行ってきたものであるが、瀬戸大橋効果については、活用できる資料が限られていたことなどから、今後もさらに分析を進めるべきものと考えている。
 しかしながら、21世紀初頭における本県の将来像とか、本県がとるべき施策の基本的な展開方策については、1つの考え方を示すことができたものと思っている。
 最後に、本報告書が、今後、本格的な本四三架橋時代である21世紀初頭における本県の施策を検討していく上で大いに活用されることを願うものである。

これまでの検討作業の経緯

平成8年度
各種資料の収集及び分析
平成9年度
4〜11月 とりまとめ
12月 企業ヒアリング(2日〜12日)
第21回政策企画会議(19日)で第1章を報告
修正作業
1月 第22回政策企画会議(14日)で第2章を報告
修正作業
2月 第23回政策企画会議(19日)で第3章を報告
修正作業
3月 第24回政策企画会議(25日)で全体の最終報告
 

参  考

企業ヒアリング調査結果

1)A社(製造業)四国支社

(1) 設立の経緯と支店支社の機能
(a) 開設の経緯

 地元と密着した営業活動を行う拠点として四国支社が誕生した。それまでは、四国の営業は、東京・大阪から人を派遣していた。

(b) 支店の統轄範囲

 統括範囲は、取扱製品に関しては四国全体を統括。中国地方は広島市に立地する中国支社が統括している。

(2) 支店支社の機能(取り扱い商品等)
 営業。
 取り扱い品目によっては、大阪から人を派遣している。
(3) 取 引 先
 官公庁(国の出先や地方自治体)、民間企業
(4) 立地の考え方
(a) 生産機能

 職員の合理化は進めているが工場の移転は簡単には考えられない。

(b) 支店支社機能

 顧客とのリレーションを重視している。
 各県ごとに特徴があり、高松にいるだけでは十分に対応できない。今後とも顧客との密着度は高まると考えられる。(支店支社機能の重要度は高まる)

(c) 物流機能

 製品の性格上、製品の輸送に時間は、あまり問われない。そのため物流機能は、工場からの直送で十分対応できる。

(5) 三架橋の影響
 三架橋時代となっても支店支社機能の立地は当面変わらない。
 生産機能は簡単には動かせない。物流機能は四国内には必要ない。
(6) そ の 他
 四国内の移動は車中心
 四国のマーケットは公共投資によって左右される。

2)B社(製造業)四国支社

(1) 支店設立の経緯と支店支社の機能
(a) 開設の経緯

 大阪営業所の分室として駐在所を設置後、四国の拠点として位置付けられる。

(b) 支店支社の統轄範囲

 統括範囲は四国全体である。
 取り扱い製品の一部の営業、受発注を別会社へ移管している。

(c) 支店支社の機能

 別会社へ移管したものを除く営業機能。(工場の管理は本社)

(2) 取 引 先
 官公庁(国の出先、地方自治体等)、民間企業
(3) 立地の考え方
(a) 支店支社機能

 顧客との密着度を高める方向に動く。高松は重要顧客である国の出先機関、民間企業の支店支社が集積しており立地を変える必要性は感じていない。
 密着性が高い製品は各県にある支店等でカバーしつつ、統轄機能については中四国地方で統合した。

(b) 生産機能

 協力会社など地域との関わりが強く簡単には移転できない。
 最近は生産機能の増設を迫られるようなヒット商品も現れておらず、現行機能に加えて新たな生産機能を増設する必要にも迫られていない。

(c) 物流機能

 現在、物流センターは大阪に立地している。一日単位で対応可能なもの(受託生産等による生産)については、西日本に一つの物流拠点を持てば十分に対応が可能である。

(4) 三架橋の影響
 三架橋時代となっても顧客がいる限り現在と変化はないと思われるので、支店支社機能の立地は当面変わらない。
 明石海峡大橋の開通によって徳島県が大阪に取り込まれる可能性がある。そうなっても、徳島県には中枢的な機能立地は期待できない。
(5) そ の 他
 本社との往来については飛行機を利用するため、四国内でどこに立地していても差はない。

3)C社(製造業)

(1) 支店設立の経緯と支店支社の機能
(a) 開設の経緯

 外資系企業、県外本社企業として香川県や四国の市場を開拓するために顧客密着性を重視している。営業活動の中で、四国内や同一県内に出先があるかが問われる場合が多い。
 地元経済団体からの強い要望があった。

(b) 支店の統轄範囲

 統轄範囲は四国全体、特に香川県と徳島県を直轄

(c) 支店支社の機能

 営業、メンテナンス等

(2) 取 引 先
 官公庁(国の出先、地方自治体等)、民間企業
(3) 立地の考え方
(a) 支店支社機能

 支店支社機能においては、Face to Faceを重視した販売を行う商品とマスマーケティングによって販売される商品との2極化が生じている。
 Face to Face重視の販売形態をとる業態では、支店支社機能を強化する方向に向かうが、現在のようなヒエラルキー構造は解消される可能性が高い。しかし、四国の支店支社機能は、国の出先機関等が集中している高松から当面の間動かない。
 中国支社と機能統合は、移動のためのコスト(橋の料金)が高すぎるので難しい。

(4) 三架橋の影響
 三架橋は香川県にとって大きな影響を及ぼすとは考えられない。それよりも四国全体の活力維持が重要である。
 既存集積から見て徳島市への機能の移転は考えられない。
(5) そ の 他
 四国には、九州の福岡市、北海道の札幌市のような明確に拠点と呼べる都市はない。その背景には50万人以上の人口規模を持つ都市がなく、人材が集まらないことがあるのではないか。
 橋は、外部との精神的距離感を縮める効果がある。しかし、香川県が四国の中心をめざすためには四国内の交通基盤整備が必要である。
 香川県を含む四国内では、成長している企業、外から進出してきた企業に冷たいという風土が残っている。これを変えていくとともに四国全体のボトムアップにつながる施策展開が香川県の発展へとつながる(内発型産業施策への転換)。
 四国のマーケット規模は、小さすぎる。

4)D社(サービス業) 四国支社

(1) 支店設立の経緯と支店支社の機能
(a) 開設の経緯

 四国出張所開設後、高松支社、四国支社となった。

(b) 支店の統轄範囲

 統轄範囲は徳島を除く四国(徳島は関西支社が統轄)。松山には営業所を設置。

(c) 支店支社の機能

 企業への営業機能に加え、メディアへの営業機能を担う。

(2) 取 引 先
 官公庁(国の出先や地方自治体等)、民間企業
(3) 立地の考え方
(a) 支店支社機能

 高松には国の出先や会社の支店支社などが集中し、需要があるから立地している。顧客が移転すれば、当然移転を考える。
 地方に必要なのはコーディネーター機能、営業機能であり、企画や生産は本社や大阪で行えばよい。

(4) 三架橋の影響
 橋ができたとしても現在集積している支店支社機能が移転しない限り、支社の立地場所が変わることは考えられない。
(5) そ の 他
 地域への密着度を高めるとともに、地方での採算性を高めるために分社化の動きが出始めている。
 岡山市は大阪にある関西支社が管轄しており、同じ管轄になる可能性は低い。

5)E社(製造業) 四国支店

(1) 設立の経緯と支店支社の機能
(a) 開設の経緯

 大正時代に高松へ進出し、後に四国支社に変更した。四国内で商売を行うためには、「高松支社」の名称では愛媛、高知、徳島への進出が難しい。

(b) 支店支社の統轄範囲

 統轄範囲は四国全体。中国地方は広島市で統轄(岡山以西)している。

(c) 支店支社の機能

 顧客密着型の営業活動を行っている。

(2) 取 引 先
 官公庁(国の出先機関、地方自治体)、民間企業
(3) 立地の考え方
(a) 支店支社機能

 国の出先があることによる漠然とした安心感や、公共工事を受けるゼネコン等からの発注が見込める。国の出先や支店支社機能の集積も重要である。
 徳島に立地した場合、愛媛へのアクセスが悪い。高松は四国内の各都市への距離感がいい。

(b) 物流機能

 サービスステーションは松山、丸亀、高知に設置。
 取り扱う商品と特性から顧客への近接性が問われる。

(4) 三架橋の影響
 岡山との交流を考える場合には、橋の料金が高すぎる。
 ビジネスへの影響があるとすれば、今後の設備投資による需要の動きである。
 四国外との機能統合は、橋の料金が無料なら検討する。橋の料金が、四国からの機能流出を防止している。
(5) そ の 他
 四国内の移動は全て車による。

6)F社(製造業)四国支店

(1) 設立の経緯と支店支社の機能
(a) 開設の経緯

 高松にあった出先を四国支店として統合した。

(b) 支店支社の統轄範囲

 統轄エリアは四国全域(他に松山、高知に営業所)

(c) 支店支社の機能

 別会社に移管した製品以外の営業。別会社にした理由は、顧客への密着度を高めるため。
 代理店(小売店)の管理・研修。
 一般消費者へのショールーム機能。

(2) 取 引 先
 官公庁(国の出先、地方自治体)、民間企業、一般消費者
(3) 立地の考え方
(a) 支店支社機能

 一時期、中四国で同一エリアとしていた時期もあったが、現在は顧客への密着性を高めるため、四国は同一エリアとして考えている。
 市場があるところに立地することにしている。

(b) 物流機能

 物流に関しては最近別会社化した。
 取り扱い製品によっては、スピードが勝負であり商物分離が進みつつある。物流拠点についてはコストと効率性が最優先で立地が決定される。近年、市場に近接させる動きがある。
 別会社は、宇多津に物流センターを配置している。

(c) 三架橋の影響
 
 三架橋時代になっても基本的に支店支社機能の配置に大きな変化はない。
 物流機能については大きく動く可能性はある。

(d) そ の 他

 製品によっては、エリア外営業が頻繁に行われているものがある。四国内の企業活動が活発になれば、四国支社の位置づけも高まり、高松や香川県の発展につながる。

7)G社(製造業)四国支社

(1) 設立の経緯と支店支社の機能
(a) 支店支社の統轄範囲

 統括範囲は四国全域

(b) 支店支社の機能

 営業の統括
 管理業務(総務、経理)
 販売店、ユーザーの研修

(2) 取 引 先
 官公庁(国の出先機関、地方自治体等)、民間企業
 国の出先機関に関連し、企業の支店支社が立地することにより集積のメリットが発生している。
(3) 立地の考え方
(a) 支店支社機能

 顧客とのリレーションを重視する。
 今後、顧客と接する支店支社機能が充実されることはあっても、縮小されることは考えにくい。保守、サービスを行う拠点は増加する傾向にあり、現在でも各県に一つずつ立地している。

(b) 物流拠点

 物流拠点は統合に向かう可能性はある。物流拠点は効率性が重視されるため集積とは関係なく立地する。

(4) 三架橋の影響
 三架橋時代になっても、国の出先機関や企業の支店支社を中心とした現在の集積は変わらない。
 顧客が動かない限り高松の拠点性は変わらない。
 物流機能は、大きく動く可能性がある。
 高松の拠点性は、四国全体のボトムアップによって確保される。
(5) そ の 他
 架橋よりも、四国内の道路ネットワークの整備が重要である。

8)H社(流通) 四国支店

(1) 設立の経緯と支店支社の機能
(a) 支店支社の統轄範囲

 四国内拠点の統轄
 四国内各県に営業所を配置

(b) 支店支社の機能

 国の出先機関への対応
 管理業務

(2) 取 引 先
 民間企業(一社貸切を区域貨物と呼ぶ)
 一般顧客(宅配便等を路線貨物と呼ぶ)
(3) 立地の考え方
(a) 支店支社機能

 顧客への密着性を高めるために、貨物の発生量や顧客の立地等の要因から立地

(b) 物流機能

 区域輸送には物流拠点は不要。ルートは運行管理とコストによって決まる。
 路線貨物については、需要が多い地域のサービス(集荷時間等)を維持するため、物流拠点も顧客が多い地域に隣接させる方が効率的な場合が多い。
 三架橋時代になってもすぐさま徳島に移るとは限らない。(発生貨物が多いのは高松、松山、新居浜、坂出、観音寺、高知)

(4) 三架橋の影響
 トラックが走るルートは、変更される可能性がある。
 また、四国内の貨物を集めるターミナルも変更する可能性はあるが、貨物の発生量との関係もあり、大きくは変わらない可能性が高い。香川県の徳島県寄りの地域と徳島県内貨物をまとめる拠点ができる可能性はある。
 岡山県とのエリア統合は、可能性は低い。
(5) そ の 他
 三架橋整備より四国の道路網整備の方が重要性が高い。

9)I社(製造業) 四国支社

(1) 設立の経緯と支店支社の機能
(a) 支店支社の統轄範囲

 統轄エリアは四国内

(b) 支店支社の機能

 別会社(顧客との密着性を高めるため地域別に会社を設立)が担当している製品以外の営業機能

(2) 取 引 先
 官公庁(国の出先機関、地方自治体)、民間企業
(3) 立地の考え方
(a) 支店支社機能

 地域への密着度を高めていく方向での立地をめざす。
 受注がある事業所数は、高松が圧倒的に多い。

(b) 物流機能

 受注生産型の商品については、工場からの直送で十分に対応できるので物流センター的機能は必要ない。
 別会社が扱う製品については、ロットが小さいこと、発注から納品までの時間が短いことなどから四国内に在庫を抱えておく必要があり、物流機能を四国内に置く必要がある。

(4) 三架橋の影響
 三架橋時代が到来しても、四国の中心は高松であることは、顧客数等からみても揺るがない。
 地域密着型の営業をめざしているため、中国地方との統合も考えにくい。
(5) そ の 他
 橋があることのメリットは、緊急時への対応が可能なことである。
 架橋よりも四国内の交通基盤整備が重要である。
 マスマーケティングが中心となる製品を扱う企業の機能立地は、今後、変化する可能性がある。

10)J社(商社)四国支店

(1) 設立の経緯と支店支社の機能
(a) 開設の経緯

 出張所を開設後、支店になる。

(b) 支店支社の統轄範囲

 統轄エリアは四国全域。松山市は事業所数は多いが発注機能を持った事業所は少ない。

(c) 支店支社の機能

 顧客密着型の営業活動を担当。

(2) 取 引 先
 民間企業
(3) 立地の考え方
(a) 支店支社機能

 顧客への至近性を重視。四国内で活動する際に、四国外の地域名が出てくると活動しにくい。そのため、中国と四国を統合することは難しい。

(b) 物流機能

 扱っている商品で物流機能が最も重要となるのは、食品分野であるが、この分野は市場近接型の物流機能が必要なので、架橋の影響は受けにくい。

(4) 三架橋の影響
 徳島の企業が高松をとばして大阪と取り引きする可能性は高い。
 高松に現在の集積がある限り、機能が移転することは考えられない。
(5) そ の 他
 四国の総人口は約400万人であり、北海道の総人口500万人と比較しても市場規模としては見劣りするものではない。高松の拠点機能は、少なくとも札幌レベルまでは発展できる可能性はある。

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