第2章 今後成長が期待される15分野(新規・成長15分野)の香川県における集積状況と展開の考え方
 

1 新規・成長15分野の集積状況

(1)事業所の集積状況等
 
@ 事業所・企業統計調査報告からみた15分野の集積状況と今後の成長見通し
 ア 集積状況
 「平成8年事業所・企業統計調査報告(総務庁統計局編)」を用いて、県内事業所に働く従業者の属する業種から、新規・成長15分野の集積状況を把握する。
 具体的には、同報告に示されている産業小分類別の従業者数を新規・成長15分野の各分野別に積み上げて、分野毎の集積状況をみる。その結果を全国と比較すると、次のようなことが言える。
香川県の総従業者数(517,224人)の全国に占める割合は、0.8%である。
新規・成長15分野別に積み上げた各分野の従業者数の全国に占める割合が0.8%を上回るのは、バイオテクノロジー関連分野をはじめ6分野である。
四国の他県と比較すると、人材関連分野の構成比率が高い。
 
県内に集積がみられる新規・成長分野
◯バイオテクノロジー関連分野       1.2%
◯医療・福祉関連分野           0.9%
◯生活文化関連分野            0.9%
◯年環境整備関連分野           0.9%
◯新エネルギー・省エネルギー関連分野   0.9%
◯人材関連分野              0.9%
 
 
[新規・成長15分野]
[事業所・企業統計調査報告ベースからみた15分野の集積状況]
 
 成長状況
(政府が発表した雇用規模等の予測)
 平成9年5月に政府が閣議決定した「経済構造の変革と創造のための行動計画」によれば、新規・成長15分野別の2010年における雇用規模・市場規模の予測は、次のとおりとなっている。
雇用規模、市場規模ともに増加倍率が高い分野は、「バイオテクノロジー関連分野」、「新エネルギー・省エネルギー関連分野」、「流通・物流関連分野」、「住宅関連分野」である。
市場規模予測は、「流通・物流関連分野」が132兆円、「情報通信関連分野」が126兆円となっており、この2分野で全分野合計の約1/2を占めている。

 
[「新規産業創出環境整備プログラム」15産業分野の雇用規模・市場規模予測]
 
(香川県における従業者数の推移)
 香川県における15分野別従業者数の推移をみると、平成3年から平成8年にかけては、次のとおりとなっている。
増加倍率が高い分野は、「医療・福祉関連分野」、「ビジネス支援関連分野」、「人材関連分野」である。
最も構成比が高い「生活文化関連分野」は、従業者数が減少している。

 
[香川県における15分野の従業者数の推移]
[新規・成長15分野の対全国集積・成長状況(従業者ベース)]
 
A 新規・成長15分野関連企業の具体的立地状況等
(県内における産業クラスター(集積地域)の形成状況)
 香川県においては、地場産業の分野では、クラスター(集積地域)の形成がみられ、これらの産業クラスター内には伝統的な技術やノウハウ、製品販路等がある。
 地場産業は、近年の国際化、地域間競争等で停滞傾向にあるが、これらの集積を活用することにより、新産業の導入が容易になることも考えられる。
 
[香川県における地場産業集積状況]
 
(個別企業の立地経緯等)
 新規・成長15分野に該当する県内の数企業に対し、ヒアリング調査を行い、その具体的立地経緯等をとりまとめた。その結果、次のようなパターンが考えられる。
地場産業、地域資源の活用パターン
身近な地場産業集積や地域資源を活用して新たな事業展開を図ったパターン
大企業からのスピンアウトパターン
大企業のもとで培ったノウハウ、技術力をもとに多様な事業展開を図ったパターン
競争の少ないマーケットでの発展パターン
競争の少ないマーケットを基礎にして全国への事業展開を図ったパターン
 
 また、これらの企業が指摘する香川県での事業展開上の主な課題は、次のとおりである。
公設試験研究機関、大学等による支援体制の遅れ
工学系人材の不足
消費情報等、関連情報の不足

【参 考】企業に対するヒアリング結果の概要

○生活文化関連企業(冷凍食品メーカー)
瀬戸内海の水産加工業を機に冷凍分野にターゲットを絞り発展

 
(立地経緯)
 瀬戸内海のエビ等、水産物の加工業から出発し、主に香川県内に工場を配置し、生産の効率化と情報の管理を図る。
 
(事業展開の特徴)
海外にも積極的に展開を図るとともに、海外と国内で製品の棲み分けを明確にし、コスト削減を図る。
香川県外の生産拠点では、当該産地のイメージを活用する。
東京において、新商品のモニターを実施する。

 
(香川県内の事業環境)
本社周辺に有望な企業が少なく、優秀な人材確保の面で有利
物流に対する高度化ニーズ(定時配送等)が高まる中、物流コストが上昇


○住宅関連企業(マンション販売)
地域マーケットの寡占から品質をもとに全国マーケットへと展開
 
(立地経緯)
狭小な地域マーケットから出発したが、狭小なゆえに他企業の参入が少ない。
 
(事業展開の特徴)
拠点整備を行いながら全国展開を図る。
顧客ニーズに対応した新商品の企画に重点を置き、ゼネコンに対しても各種設備の提案を行えるよう研究部門を充実する。
東京において商品企画を実施(住宅潮流はまず東京からで、地方では数年後に流行する)

 
(香川県内の事業環境)
建築系の大学、公設試験研究機関や権威のある建築系の試験機関が存在しない。

 
○都市環境整備関連企業(建設用機械メーカー)
地域関連企業による生産クラスターを形成し効率的な生産を展開

 
(立地経緯)
創業者が地元での事業展開を図り、高松市周辺に工場等を整備

  
(事業展開の特徴)
海外への積極的な展開を志向
高松市周辺に立地する研磨、金属加工等の協力企業の育成・連携により、生産クラスターを形成し、効率的な生産活動を実施

 
(香川県内の事業環境)
物流コストの問題(エンジン、電子部品は、遠距離のメーカーからの仕入れ)
技術系の人材が少ない。
 
○新製造技術関連企業(エンジニアリング業)
大手企業の子会社から、ノウハウ、技術力を活かして多様な事業へ拡大展開

 
(立地経緯)
大手企業の子会社として建設・補修工事で培った技術を応用して事業展開を図る。

 
(事業展開の特徴) 
エネルギー、環境関連、情報通信関連、土木建設分野への参入
IPP(小型発電機)等、国内シェアの高い技術力を有する。
ゴミ処理、灰処理、水処理等に関する幅広い技術力を有し、製品化等に向けて企業と共同開発を実施
設計・開発のための技術開発部門を整備

 
(香川県内の事業環境)
支店の集積があるため、四国内の受注を進める上で有利
香川県内企業からの受注額は少なく、市場が狭小
東京、大阪等の大都市や海外へのアクセスが不便
 
○ビジネス支援関連企業(製品企画業)
地場産業に対する製品企画アイデアの提案による事業の展開

 
(立地経緯)
医療福祉に関するアイデアをもとに、手袋産業等、地場産業の高付加価値化に寄与するアイデアを提供

 
(事業展開の特徴)
アイデアをメーカー等に対して売り込み、そのロイヤルティーを得る。
企画商品に対して試験を実施する。

 
(香川県内の事業環境)
工学部系の人材が少ないため、隣県の大学の人材を活用

 
(2) 新規・成長15分野におけるシーズの集積状況
 
@ 県内企業が有する技術シーズの内容
(技術・製品の所持状況)
 県内企業に対するアンケート調査で、「核となる技術・製品(世界的・国内有数レベル等)の有無」について聞いたところ、約25%の企業が「有する」と回答しており、業種別では、加工組立型企業の半数近くが「核となる技術・製品を有する」としている。
 「核となる技術・製品を有する」企業は、今後、他社との競合や事業の高度化・多角化に対して、優位に事業展開が図れるものと考えられる。
 
[業種別にみた各となる技術・製品の所持状況]
 
(核となる技術開発の経緯)
 同アンケート調査結果によると、「核となる技術」の開発経緯は、最も多いのが「過去からの技術集積」であり、次いで「社長等の一部の人による開発」となっており、「自社内の研究開発部門が開発」や「他社との共同開発」は、それほど多くない結果となっている。また、「他社との技術提携」、「公設試験研究機関との共同開発」は、さらに少なくなる。
 今後、新たな競争環境に置かれる香川県内の企業にとって、製品・技術の開発のための組織化や他の機関との共同体制の確立が重要な課題になるものと考えられる。
 
[核となる技術の開発経緯]
 
(核となる技術と新規・成長分野)
 核となる技術が属する新規・成長分野では、最も多いのが「新製造技術関連分野」、次いで「生活文化関連分野」、「環境関連分野」、「バイオテクノロジー関連分野」等となっている。
 具体的には、「医療・福祉関連分野」では医療用具等、「生活文化関連分野」ではバーチャル技術を利用した音など特徴的なもの、「情報通信関連分野」ではカラー印刷等が挙げられている。また、「新製造技術関連分野」では、超精密加工、曲げ技術、印刷技術等、多様な技術が挙げられており、「環境関連分野」ではリサイクル等、「バイオテクノロジー関連分野」では飲料、農業関連、「新エネルギー・省エネルギー関連分野」では電力関連、断熱技術、「住宅関連分野」では合板技術等が挙げられている。
 
[核となる技術の内容]
 
(核となる製品と新規・成長分野)
 核となる製品が属する新規・成長分野では、最も多いのが「新製造技術関連分野」、次いで「医療・福祉関連分野」、「情報通信関連分野」、「環境関連分野」、「生活文化関連分野」、「バイオテクノロジー関連分野」等となっている。
 具体的には、「医療・福祉関連分野」では医療機器等、「生活文化関連分野」では手袋、サンダル等、「情報通信関連分野」では通信、画像処理等のハイテク製品となっている。また、「新製造技術関連分野」では、化学、造船、冷凍食品等の分野で多様な製品が挙げられており、「環境関連分野」では中水、リサイクル等、「バイオテクノロジー関連分野」では飲料、農業関連、「住宅関連分野」では木材関連等の製品が多くなっている。
 
[核となる製品の内容]
 
A 県内公的試験研究機関の取り組み
 県立の工業技術センター、同食品試験場、同発酵食品試験場及び国立の四国工業技術研究所に対するヒアリングを行った結果、各試験研究機関の取り組み状況は次のとおりである。
 
(香川県工業技術センター)
 新規産業創出に効果のある新素材関連の先導的な研究や精密加工・メカトロニクス関連における地域企業の技術高度化に資する研究開発を行うとともに、石材・窯業等の地場産業関連のニーズに対応する研究開発等も行っていく。
 
(香川県食品試験場・発酵食品試験場)
 香川県食品試験場及び発酵食品試験場では、主に、地場産品に関連した食品加工や発酵技術に関する研究開発を行っている。今後、これらの技術を普及させるためには、「実証試験用施設(中間プラント)」を必要としている。
 
(四国工業技術研究所)
 重点研究分野は、海洋資源開発、海洋資源の工業的活用に関連する分野である。
 また、四国地域内の企業の技術力の向上に向けて、計測・加工技術、プロセス技術等の新材料開発プロセスに関する研究を実施している。
 
[香川県内の公的試験研究機関が有する技術シーズの内容(ヒアリング結果)]
 
(3) 新規・成長15分野に対するニーズ状況
 
@ 新規事業分野への参入意向
 アンケート調査結果によると、約31%の企業が、今後、新規事業分野への展開の可能性があると答えている。
 これを業種別にみると、加工組立型産業では約47%の企業が可能性があると回答しているのに対し、生活関連産業、基礎素材型産業では、それぞれ約28%、約25%となっており、新規事業分野への参入意向についてかなりの差異がみられる。
 
[業種別の新規事業分やへの展開の可能性]
 
A 新規・成長15分野に対するニーズ
(今後、強化していきたい分野)
 アンケート調査結果によると、企業が今後の事業展開において強化していきたいと考えている分野は多岐にわたっているが、中でも「環境関連分野」、「新製造技術関連分野」に対するニーズが高くなっている。具体的内容としては、環境関連分野では産業廃棄物処理、リサイクル等が、また、新製造技術関連分野では自動化、加工技術等の技術開発等が挙げられている。
 
[今後、強化していきたい分野]
 
(今後、研究・技術交流を推進していきたい分野)
 アンケート調査結果によると、企業が今後、研究・技術交流を推進していきたいと考えている分野としては、「新製造技術関連分野」、「環境関連分野」、「情報通信関連分野」、「バイオテクノロジー関連分野」の割合が高くなっている。
 
[今後、研究・技術交流を推進していきたい分野]
 
B 今後の事業展開における課題
 アンケート調査結果によると、企業が今後新規事業分野への事業展開を進める上で課題となると考えているものとしては、「自社における優秀な人材の確保」、「技術開発」、「自社のマーケティング能力」などが多くなっている。
 「優秀な人材の確保」に関しては、企業ヒアリング調査においても、事業の高度化に対応できる優秀な人材の確保が難しいとの指摘があった。
 また、「技術開発」については、開発ニーズが高いにも関わらず、どのような行動をとればいいのかわからないといった状況がみられる。
 「自社のマーケティング能力」とは、売れる商品を企画する能力であり、この場合、マーケティングノウハウを収得する一方で、需要地への直接的な乗り込み調査が必要と考えられる。

[今後の事業展開における課題]
  
(4) 気候、社会環境等の特性
 
 香川県は、製造業等の産業集積面では、愛媛県や対岸の岡山・広島県と比べると劣っている場合が多い。このため、香川県において新規・成長産業を考えていく場合、産業集積のみならず、気候、地形・地理、社会環境等の香川県が有する特性を積極的に活かしていく必要がある。
 
[香川県における活用可能な資源]
 
(5) 新規・成長分野振興に当たっての事業環境の分析
 
 これまで行ってきた事業環境の分析事項は、次のとおりである。
事業環境の分析事項
産業構造 製造業、卸・小売業、サービス業の集積
食料品産業の集積
情報サービス・調査業等の高成長
新規工場立地の増加
開業率が全国平均を下回っていること
支社・支店の集積
大規模な工場の集積(金属、一般機械、電気機械、輸送機械等)
民間企業の多様な事業展開の動き
民間企業の研究施設の整備進展
インフラ整備 道路ネットワークの整備
国内航空ネットワークの整備
海上ネットワークの整備
香川県工業技術センター・食品試験場・発酵食品試験場
四国工業技術研究所
香川インテリジェントパークの整備
サンポート高松の整備
香川大学工学部の新設
社会経済環境の変化 メガ・コンペティション(大競争時代)の到来
高齢・少子化の進展
アウトソーシング時代の到来
本四三橋時代の到来
新規・成長分野の集積状況 医療福祉関連分野の集積
生活文化関連分野の集積
冷凍食品産業の集積
都市環境整備関連分野の集積
新・省エネルギー関連分野の集積
バイオテクノロジー関連分野の集積
人材関連分野の集積
核となる技術・製品を有する企業の存在
気候、地理・地形等 温暖・晴天
瀬戸内海(水資源)、讃岐山脈(林産資源)
観光資源(お遍路めぐり、栗林公園、こんぴらさん等)
その他 工学系人材の不足
公設試験研究機関等との連携の希薄さ
需用地との地理的不便性
 
 これらの事項について、新規・成長分野の振興を図る観点から、その促進性、阻害性を整理すると次のようになる。
 
@ 分野別の促進要因
 ○全体的に促進要因と考えられる香川県の特性として
製造業、卸・小売業、サービス業の集積
情報サービス・調査業等の高い成長性
新規工場立地の増加
県内企業の多様な事業展開の動き
香川大学工学部、公設試験研究機関、インテリジェントパークの整備
等が挙げられる。
 ○また、分野が限定されるが促進要因として考えられる特性として、
地場産業におけるクラスター(集積地域)の形成
金属、一般機械等の製造業の集積
食品関係の県立の試験研究機関の存在
医療・福祉、生活文化、都市環境整備、新エネルギー・省エネルギー分野の集積
等がある。
 
A 分野別の阻害要因
 ○全体的な阻害要因と考えられる特性として、
工学系人材の不足
公設試験研究機関等との連携の希薄さ
需要地との地理的不便性
等が挙げられる。

 ○また、促進要因にも阻害要因にもなり得ると考えられる特性として、
メガ・コンペティション
高齢化
等が考えられる。
 
 
2 香川県における新規・成長分野展開の考え方
(1) 新規・成長分野展開の基本的な考え方
 
@ 基幹産業分野と産業支援分野
 今後成長が期待される新規・成長15分野をみた場合、製造業等、地域の基幹産業になり得る業種が含まれる分野(基幹産業分野)と基幹産業を含めた地域産業全体を横断的に支援する分野(産業支援分野)とに分けることができる。
 基幹産業分野は、今後、地域の基幹産業となり得るための十分な市場規模、波及効果を有する産業分野である。一方、産業支援分野は、地域産業がどのような基幹産業であろうとも必要とされる産業分野であり、地域産業全体の高度化をサポートすることができる分野でもある。この産業支援分野としては、新規・成長15分野の中で、流通・物流関連分野、人材関連分野、国際化関連分野、ビジネス支援関連分野、新製造技術関連分野が考えられる。
 
○流通・物流関連分野
 流通・物流関連において今後、伸びが期待されるのは、サードパーティロジスティクス(荷主に対して物流改革を提案し、包括して物流業務を受託する業務)等、新たな業態・サービスの開拓であり、これらの市場の拡大により、製造業、卸売業、小売業の間にまたがる貨物の流動化を進め、物流の効率化を図ることになる。
 
○人材関連分野
 今後、人材の流動化が進むことが予想され、研究人材、事務人材等、スペシャリストの人材派遣業等のマーケットが拡大するものと考えられる。人材派遣業等が対象とする業種は、製造業、卸売業、小売業など多様で、これらの業種企業のコスト削減と経営の効率化に寄与する。
 
○国際化関連分野
 地域産業においても国際化は避けて通れない状況の中で、貿易関連業務、国際会議サービス等の国際化関連分野は、企業の国際化をサポートする分野として重要である。
 
○ビジネス支援関連分野
 企業活動の高度化に伴い、外部の専門的な技術、情報等を活用する経営スタイルが広まっている。こうした動きから、コンサルタントや専門事業サービス業等が該当するビジネス支援関連分野が必要とされる。
 
○新製造技術関連分野
 製造業における効率化・高度化のために、新製造方法、新製造機械の開発を通じて新しい製造プロセス技術を供給することが期待されている。
 
新規・成長15分野の考え方
基幹産業分野(10分野) 産業支援分野(5分野)
住宅関連分野
医療・福祉関連分野
生活文化関連分野
都市環境整備関連分野
環境関連分野
新エネルギー・省エネルギー関連分野
情報通信関連分野
バイオテクノロジー関連分野
航空・宇宙関連分野
海洋関連分野
流通・物流関連分野
人材関連分野
国際化関連分野
ビジネス支援関連分野
新製造技術関連分野
 
A 新規・成長分野への展開等による地域産業振興の考え方
 香川県が、グローバル化、メガ・コンペティション等の新たな社会経済環境の変化に的確に対応し、地域経済の持続的な発展を図っていくためには、独自性・優位性のある新規産業の育成や多様な基幹産業の集積を図り、他地域との比較優位性を確立する必要がある。その際、事業の展開分野はあくまで民間企業の自由意志で決めるべきものであるという考え方を基本としながら、企業の自助努力を支援する施策の展開に当たっては、限られた資源を効率的に投資していくために、ある程度、的を絞って基幹産業の集積が図れるような環境づくりをすることが効果的である。
 このようなことから、香川県において、今後成長が期待される新規・成長分野への展開等の事業活動を支援していく上では、基幹産業分野においては、特に香川県において成長可能性が高い分野を選択して支援施策を講じることが重要である。
 一方、産業支援分野については、地域産業全体の高度化をサポートする機能を有しており、特定の分野に偏重することなく、有効な支援をしていくことが重要である。
 
 香川県における新規・成長分野への展開等による地域産業振興の考え方は次のとおりである。
基幹産業分野から香川県の特性を活かせる分野をいくつか選択する。
 今後の地域経済は、特定の産業による企業城下町タイプではなく、複数の産業が集積することにより、地域経済が牽引されるような方向が望ましい。
基幹産業分野の波及効果がその他の産業分野に広がる。
 基幹産業分野の振興により、その技術力、マーケット等の波及効果が広く地域産業に及ぶ。
産業支援分野は地域産業全体の高度化をサポートする。
 新製造技術関連分野等は、基幹産業分野の展開の中で高度化され、その効果がその他の産業分野に及ぶ。

基幹産業分野、産業支援分野、その他の産業分野の間の連携は必ずしも香川県内に限定されない。
 香川県内の立地資源は必ずしも十分とは言えず、近隣接県との連携や、情報ネットワークを介した国内外の地域との連携が重要である。

 
(2) 香川県の特性を活かした新規・成長分野の選択
 
 新規・成長分野のうちの基幹産業分野から、本県の特性を活かしたいくつかの戦略的な投資分野を選択する際には、集積、成長、技術シーズ、民間企業ニーズ、気候などの特性を重視するとともに、対象産業の裾野の広さなどの地域へのインパクトも考慮する。
 
○集積
 事業所・企業統計調査報告からみた新規・成長分野の集積(45〜46頁参照)とともに、自らの成長力で関連事業への展開を図ることが可能である有力企業(電力会社、食品企業、建設輸送企業、化学系企業等)の立地や伝統的技術、ノウハウ、販路等を活かして関連事業への展開が可能と考えられる地場産業(水産加工、醤油等の発酵、手袋・うちわ・アパレル等)の集積(48〜49頁参照)も考慮にいれるべきと考える。
 事業所・企業統計調査報告からみた集積からは、「医療・福祉関連分野」、「生活文化関連分野」、「都市環境整備関連分野」、「新エネルギー・省エネルギー関連分野」、「バイオテクノロジー関連分野」が有望と考えられる。
 有力企業の立地や地場産業の集積からは、「住宅関連分野」、「生活文化関連分野」、「都市環境整備関連分野」、「バイオテクノロジー関連分野」が有望と考えられる。
 
○成長
 事業所・企業統計調査報告に基づく従業員数の推移(47〜48頁参照)からみると「住宅関連分野」、「医療・福祉関連分野」、「都市環境整備関連分野」、「環境関連分野」、「情報通信関連分野」が有望と考えられる。
 
○技術シーズ
 技術シーズが新事業展開の糧となることから、アンケート調査により、民間企業が有する技術力の評価を行う(50〜53頁参照)とともに、公設試験研究機関に対するヒアリング調査により同機関が有する技術シーズについても評価を行う(54〜55頁参照)。
 アンケート調査結果からは、「医療・福祉関連分野」、「生活文化関連分野」、「環境関連分野」、「情報通信関連分野」、「バイオテクノロジー関連分野」が有望と考えられる。
 公設試験研究機関に対するヒアリング調査結果からは、「生活文化関連分野」、「バイオテクノロジー関連分野」、「海洋関連分野」が有望と考えられる。
 
○民間企業ニーズ
 新分野への事業展開を図るのは、あくまで民間企業自体であるから、民間企業ニーズは重要な条件の一つであることから、アンケート調査によりそのニーズの評価を行う(55〜56頁参照)。その結果、「住宅関連分野」、「医療・福祉関連分野」、「環境関連分野」、「情報通信関連分野」、「バイオテクノロジー関連分野」が有望と考えられる。
 
○気候、社会環境等の特性
 気候、地理・地形、社会環境等の香川県の有する特性(57〜58頁参照)を考慮すると、「医療・福祉関連分野」、「生活文化関連分野」、「新エネルギー・省エネルギー関連分野」、「情報通信関連分野」、「海洋関連分野」が有望と考えられる。
 
○地域へのインパクト条件
 地域へのインパクトでは、「航空・宇宙関連分野」は県内の波及効果の規模があまり大きくないと思われる。
 以上の条件を総合的に評価した結果、香川県において有望な新規・成長基幹産業分野として、医療・福祉関連分野」、「生活文化関連分野」、「環境関連分野」、「情報通信関連分野」、「バイオテクノロジー関連分野」が考えられる。
 
[香川県において有望な新規・成長基幹産業分野の評価]
[(参考)四国地域内における成長有望な新規産業分野]
 


 第3章 香川県において展開すべき施策の検討

 

1 有望基幹産業分野の振興の考え方
(1) 医療・福祉関連分野
 
 医療・福祉関連分野は、急速な高齢化に伴い医療・福祉ニーズが増大することが見込まれる中で、近年、注目を浴びている分野で高度医療機器産業、在宅介護サービス業等の成長が期待されている。
 高齢者の多様なニーズに対応した良質かつ適切な医療を提供するための在宅・遠隔医療サービス等の成長や福祉サービスへの市場メカニズムの導入のためには、規制緩和の推進等が必要である。
 一方、福祉用具産業や生活空間のバリアフリー関連産業等は、現状ではそれほどマーケットは広がっておらず、多くは個々の企業が多角化事業として展開している状態であるが、大阪府でのリハビリセンターを中心とした医療機器・福祉用具等の開発や岡山県での岡山県立福祉大学を資源とした産業化の試み等の取り組みがみられる。
 香川県を含め、四国地域は全国平均よりも早く本格的な高齢社会を迎えることが見込まれている。これは香川県が大規模需要に近接していることを意味しており、他の産業分野の需要が主として東京、大阪などの大都市にあるのに対して特徴的な分野である。このため、ニーズ対応型の産業振興が可能となる。また、香川県における基盤的技術産業の中核的業種である機械刃物製造業、手道具製造業、機械工具製造業、各種機械製造業、産業用運搬車両製造業等の参入が見込める。
 在宅・遠隔医療サービスや福祉サービス等の部門は、国の規制緩和の推進、社会保障制度の見直し等に伴って、その成長が見込まれる。
 
医療・福祉関連分野

[直接サービス]
 ○施設サービス(有料老人ホーム、グループホーム)
 ○外来・通所サービス
  (フィットネスクラブ、ディサービスセンター、ショートステイセンター)
 ○在宅サービス
  (調剤薬局、訪問リハビリ、訪問看護ステーション、訪問入浴サービス、在宅配食サービス)

[間接サービス、インフラ]
 ○請負・代行サービス
  (寝具リース・リネン、給食、検体検査、医療事務、人材研修等)
 ○情報システム(遠隔医療システム等)
 ○機器、用具、材料(医療機器、福祉用具、衛生材料)
 ○住宅(住宅のバリアフリー化、緊急通報サービス)
 ○物品販売(配置薬、衛生材料・消耗品販売等)


(注)病院、老人保険施設、特別養護老人ホーム等は営利を目的としていないために、対象として考えていない。

 一方、ポテンシャルの高い福祉用具産業や生活空間のバリアフリー関連産業等の分野は、ユーザーサイドの潜在的な需要を開拓することにより、マーケットが拡大する産業である。このため、企業はニーズ情報の入手や販路開拓等、事業展開に必要な効率的な機能を有する必要がある。具体的には、次のような課題が考えられる。
大学、医療・福祉ボランティア等が有する資源の有効活用を図るための交流の促進
大阪、岡山などの周辺地域の資源の有効活用を図るための県外リハビリセンター等との交流の促進
素材メーカー、大学等との共同研究の実施
先進国メーカーとの交流促進、業務提携等
販路開拓のための商社、海外代理店との連携強化

 
[福祉用具産業の展開イメージ図]
 
(2) 生活文化関連分野
 
 生活文化関連分野においては、冷凍食品産業で中堅企業の立地等の集積がみられるほか、地場産業でも水産加工食品関係の集積がある。また、県立の食品試験場・発酵食品試験場も設置されている。
 このように他の地域に比べて集積がみられる食品関係について、県内の水産加工食品、冷凍食品、発酵食品関連企業と公設試験研究機関等との連携により、食品産業群を形成していく。そのことによって、情報の集積化と共同化(共同研究、共同仕入れ、共同マーケティング等)が可能となり、コスト削減等の集積規模による経済性が発揮できるとともに、企業の企画力を高めることができる。そのためには、次のような課題が考えられる。
大都市圏でのマーケティング活動等を通じて得たニーズ情報の共有化
新規販路拡大のための地域商品の情報発信と地域ブランドの向上
公設試験研究機関等との連携によるニーズ分析、商品企画能力の向上、共同研究、共同開発
 また、近年、余暇活動に対する国民の関心が高まっている中で、観光産業等の余暇関連産業についても、香川県は温暖な気候風土と多島美を誇る瀬戸内海や緑豊かな自然に恵まれていることから、高速交通体系や本四三橋の整備効果等を生かし、多様化するニーズに対応した製品やサービスの提供に努めるとともに、刺激ある空間創出によるアメニティの向上に向けた環境整備にも配慮しながら事業展開を図っていく。
 そのほか、手袋、衣料等の一部アパレル産業の集積もみられ、これらの産業の展開も考えられる。
 
[食品産業の展開イメージ図]
 
(3) 環境関連分野
 
 環境関連分野は、最近の地球環境問題に対する認識のひろがり等から香川県のみならず、他の地域においても同様にニーズの高い産業分野であり、今後、この分野における競争は厳しくなることが予想される。
 このため、廃棄物処理・リサイクル産業、公害防止装置、環境分析装置等の環境関連装置産業等の分野において、他の地域や県内に集積する建設機械・荷役運搬設備産業、電気・電子機械産業、造船産業等との連携により、ターゲットを絞った技術高度化やニッチ(すきま)分野の製品開発などの戦略的な取り組みを進めるとともに、情報交換、技術交換等を積極的に行い、技術革新とマーケットの変化に迅速に対応していく必要がある。
産学官共同研究のための環境コンソーシアム(共同研究体)等の形成
東京など大都市での販路開拓のための組織づくり
積極的なアウトソーシングによる販売機能、環境分析機能等の補填
海外販路開拓のための商社との交流拡大

[環境関連産業の展開イメージ図]
 
(4) 情報通信関連分野
 
 情報通信関連分野は、今後、生活のあらゆる場で電子情報技術の浸透が進むにつれて、それを支える分野として、ソフトウエア、情報処理サービス部門等をはじめとして、急速に拡大していくものと予想される。
 そこで、香川県においては、支店経済の集積などにより四国の中枢都市機能を担ってきたことから、四国全体をエリアとする経済活動への電子情報技術を活用した電子商取引に視点を置き、それらの需要にきめ細かく対応したソフトウエアの開発や情報処理サービスの提供などの方向を目指すことが効果的である。そのためには、次のような課題が考えられる。
情報サービス需要の開拓
専門的人材の供給システムの整備(Uターン制度等)
情報機器メーカー、コンテンツメーカー、人材派遣産業等の情報通信関連産業の戦略的誘致
大都市圏の情報通信関連企業との交流促進(業務提携、代理店化等)

 
[情報通信関連産業の展開イメージ図] 
 
(5)バイオテクノロジー関連分野
 
 バイオテクノロジーに関しては、近年、組換えDNA技術、細胞融合技術等の開発の進展に伴って、その応用分野は、医薬品・医療、食品、農林水産品、エネルギー、環境等、多岐にわたり、急速に拡大しているが、研究開発成果の本格的な事業化が緒についたばかりであり、技術開発の更なる推進と事業化の促進が重要課題である。
 香川県では、高度技術に立脚した工業開発を目指す「香川田園テクノポリス開発計画」においては、バイオテクノロジーを高度技術の1つと位置付け、バイオテクノロジーを利用した食品産業、農水産業の育成等、バイオテクノロジー関連産業の導入を図ることとしている。そこで、大学や公設試験研究機関、集積のある食品産業等との連携により、バイオテクノロジーを利用した高付加価値型農業への展開や食品加工等の分野での事業展開を図っていくことが効果的である。そのためには、次のような課題が考えられる。
国内外のバイオ技術情報を収集し、仲介するコーディネート機能の充実強化
公設試験研究機関の研究開発機能の充実強化(食品加工、食材開発分野等)

 
[バイオテクノロジー関連産業の展開イメージ図]
 
2 新規・成長分野展開に向けた国内の取り組みからの示唆
 
 国内において、新規・成長分野展開に向けた様々な取り組みを行っている地域があり、これらの取り組み事例から香川県の新規・成長分野展開に向けての示唆を導きだす。
 
新規・成長分野展開に関する事例

○北海道産業創造クラスター構想(北海道)
  〜民間主導による新産業創造クラスター構想の推進〜

○岡山県情報ハイウェイ構想(岡山県)
  〜情報基盤整備による新規事業展開創造〜

○横須賀テレコムリサーチパーク(神奈川県)
  〜共同研究コンソーシアムを中心とした先端産業集積拠点の形成〜

○かずさアカデミアパーク(千葉県)
  〜COE整備を核としたバイオテクノロジー産業集積拠点形成〜

○(株)広島テクノプラザ(広島県)
  〜オープンな産業支援施設を中心に展開される産業支援事業〜

○科学技術振興センター整備(岐阜県)
  〜公設試験研究機関統括組織の設置と横断的研究活動の活発化〜

○産業構造拠点地区指定による進出インセンティブの提供(兵庫県)
  〜拠点指定とインセンティブ提供による戦略的新規・成長分野の集積促進〜

○近畿産学官新規産業創造プロジェクト(近畿地方)
  〜産学官連携による新規産業創造プロジェクトの創造〜

○(株)ベンチャーリンク
  〜民間企業によるコーディネートサービスの提供〜

 
これらの事例から次のような示唆が得られる。
ターゲット分野の絞り込みと産業の広がりを念頭においたアクションプランの必要性
新規事業展開をサポートする社会基盤の必要性
大学、研究機関との機能的連携の重要性
民間企業参画の重要性
フレキシビリティ(柔軟性)とオープン性を重要視した仕組みづくり
 
(1) ターゲット分野の絞り込みと産業の広がりを念頭においたアクションプランの必要性
 
 新規・成長分野への展開を図るためには、地域にある程度集積し、かつ、裾野が広い分野をターゲットにした具体的なアクションプラン(プロジェクト)の策定・実施が必要である。
 これまで、いくつかの地域で新規・成長分野への展開を推進するための振興ビジョンが策定されてきたが、ビジョンの策定に終始し、具体的なアクションプランの策定やプロジェクトの展開までに至っていないケースも見られる。
 そのため、香川県において新規事業展開を推進するためには、具体的アクションプランの策定と迅速なプロジェクトの遂行に重点をおいた支援が必要と考えられる。
 
(2) 新規事業展開をサポートする社会基盤の必要性
 
 新規・成長分野への展開の推進に向けて、必要とされる社会基盤(例えば情報通信基盤や産官学連携の仕組みづくり)の整備が必要である。
 岡山県の事例にも見られるように、社会基盤を整備することにより、様々な実験プロジェクトが誘発されるケースがある。事業採算性が比較的担保されやすい都市部(東京、大阪)と異なり、地方においては、新規・成長分野への展開に対するリスクが大きいため、民間企業の投資意欲がわかないのが現実である。
 そのため、香川県としては、対象分野における新規・成長分野への展開をサポートするために必要な社会基盤整備を積極的に推進し、民間企業の投資マインドを刺激することが望ましい。
 
(3) 大学、研究機関との機能的連携の重要性
 
 研究開発や技術開発では、シーズを持った大学や研究機関等の参画があってはじめて、新規・成長分野への展開が誘発される。
 香川県には、香川大学農・工学部、香川医科大学、徳島文理大学工学部、高松工業高等専門学校、詫間電波工業高等専門学校等の高等教育機関や四国工業技術研究所、県立の試験研究機関等があり、こうした大学などの高等教育機関や公設試験研究機関等との機能的な連携が不可欠といえる。
 
(4) 民間企業参画の重要性
 
 近年の新規・成長分野における各種産業創造事例をみると、行政主導型よりも民間主導型に成功事例が多くみられている。これは技術革新の加速化、急速な市場構造の変化への対応など、俊敏性(アジリティ)、柔軟性(フレキシビリティ)、不確実性への対応能力が事業主体側に求められることが要因と考えられる。
 そのため、各種プロジェクトの展開に当たっては民間企業の参画が必要不可欠であり、さらに、参画を促すインセンティブ(誘因)の提供が重要である。
 
(5) フレキシビリティ(柔軟性)とオープン性を重要視した仕組みづくり
 
 変化が激しい新規・成長分野に対する支援方策に必要な要素として、フレキシビリティとオープン性を重視した仕組みづくりがあげられる。
 従来から、行政による産業支援施策については、例えば産業支援施設の利用に際しての時間的制約など、フレキシビリティとオープン性の欠如が指摘されることが多かった。
 そのため、今後、実施する各種の仕組みづくりについては、フレキシビリティとオープン性といった要素を重視し、より企業が使いやすいものを構築していくことが求められる。
 
 
3 展開すべき施策
(1) 現行施策の概要
 
 現行の香川県の産業振興施策は、@技術革新、経済のソフト化への対応としての産業の頭脳化の推進、高付加価値型産業等の立地促進、高度技術の開発に関する事業と、A経営基盤の強化、経営の近代化・高度化の促進、経済環境の変化への対応、地域産業対策の推進等に関する事業の2つに大別できる。その中で、新規産業創造(ベンチャー企業育成)のために、資金面や技術面、経営管理面等から各種の支援を行っている。
 また、科学技術の振興を図るための理工系高等教育機関の整備促進等の各種の事業や先端技術産業分野の研究開発を産学官で行うR&D施設整備事業も実施している。
 
[現行産業振興施策の概要]
[ベンチャー企業に対する支援施策]
 
(2) 民間企業の施策ニーズ
 
 民間企業が望む新規事業展開に対する支援施策をアンケート調査結果からみると、「是非必要」とする企業の割合が高い項目は、「零細企業支援」、「人材の供給支援」、「新産業創造促進助成・融資制度」、「県内外の企業、大学、公的試験研究機関等の技術、商品、人材情報の提供」である。県内の企業が人材面、資金面、情報面での支援を望んでいることがわかるものの、「零細企業に対する支援」など、必ずしも新規事業展開に着目した回答内容になっていない部分もあるものと考えられる。
 
[今後望まれる支援施策]
 
(3) 有望基幹産業分野の振興方策
 
 有望基幹産業分野について、「1 有望基幹産業分野の振興の考え方」(63〜68頁参照)において、各分野毎に、事業展開に当たっての具体的な課題を挙げたが、それらの課題に対する支援策として次のような施策を講じていく必要がある。
 
@ 既存施策の拡充
 香川県では、現行の振興施策においてもベンチャー企業に対する資金面、技術面、経営管理面からの支援施策や高付加価値型産業等の立地促進、高度技術の開発などに向けた各種の事業を実施している(71頁参照)が、これらは次のような観点から、事業の拡充を図っていく必要がある。その際、県内産業界との連絡会の設置等により、産業界のコンセンサスを得ることが重要である。
手続の簡素化など運営の柔軟性の確保
有望基幹産業分野における事業展開の積極的支援等
 
A ニーズ優先型製品開発支援
 近年の企業における製品開発は、マーケティング活動に基づくニーズに密着した製品開発が主流となっているが、今回のアンケート調査(31頁参照)では、県内企業が「マーケティング分野」や「情報収集分野」の外部企業を活用する機会が少ない結果となっていることから、ニーズ把握が十分行われていないと考えられる。
 したがって、今後は、マーケティングや販路開拓等に向けた支援策を整備・拡充する必要がある。
大都市圏等でのマーケティング活動支援のための市場調査機関等に関する情報提供等
商社、量販店等を介した販路開拓支援のための商社等に関する情報提供等
都市部における販路開拓活動支援のためのレンタルオフィスの提供等
新製品の開発・商品化やマーケティング活動支援のための各種アドバイザー事業の実施
県独自の基準(環境対策、使用素材、安全対策、品質保証等)に合致した製品に対する統一ブランド化
 
B 公設試験研究機関の機能の充実等
 公設試験研究機関については、平成8年度策定の「香川県科学技術振興ビジョン」においても、その役割が示されており、地域の企業ニーズ等に的確に対応できるよう県立試験研究機関の研究開発機能やニーズ分析機能を充実するとともに、大学や第三セクターの研究機関等における研究開発活動を積極的に支援していく必要がある。
 さらに、有望基幹産業分野の企業とのコンソーシアム(研究共同体)形成等により、産学官共同研究を推進し、研究成果の移転を図っていく必要がある。
 
C 地域COEの整備
 香川県の産業が今後、国際レベルに達するためには、優れた研究者の誘致や研究機関の集積等により、その成果を優位性のある新規産業の育成等に活かしていく必要がある。このため、香川県科学技術振興ビジョンでは、香川インテリジェントパークを中核的研究拠点(地域COE)として整備を進めることとしており、同パークにおいて産学官共同研究のためのR&D施設の整備等により、研究開発機能の集積による一体的な研究開発圏域を形成する。
 
D ワンストップアシストセンター
 企業の相談に的確に対応するため、一箇所で全ての企業相談に対応できる機能を有する総合相談窓口(ワンストップアシストセンター)の整備を図る。
 
E 戦略的企業の誘致
 大胆な優遇策を適用するゾーンを設定するなど、有望分野の企業の戦略的誘致を図る。
 
F 専門的人材の供給システムの整備
 技術革新の進展に対応しうる専門的人材の育成・確保のために、香川大学工学部など、理工系高等教育機関の機能が最大限に発揮できるよう柔軟性のある支援を行うとともに、Uターンの促進等を図る。また、優秀な人材が定着するような魅力ある生活環境の整備に努める。
 
G コーディネート機能の充実・強化
 コンソーシアムの形成等、産学官の共同研究を促進するため、優秀なコーディネータの育成・確保に努めることにより、県立試験研究機関や第3セクターなどにおけるコーディネート機能の充実・強化を図る。
 さらに、情報提供サービス産業の誘致等、民間企業による強力なコーディネート機能の導入を図る。
 
H 休眠特許の流通市場の整備
 休眠特許の有効活用を図るため、休眠特許情報の収集、特許流通フェアの開催等、休眠特許の流通市場の整備を図る。
 
I 異業種交流の促進
 創造的な新事業展開を図るため、異業種間の技術交流等、企業間の多様な連携を支援する。
 
J 県域を越えた連携の推進
 限られた香川県の資源の中では、資金、マーケティング、デザイン等商品企画などの面で、県域を越えた連携、ネットワークの構築等が必要であり、そのための支援策を整備する。
県内のみならず、県外のベンチャーキャピタルの投資を促進するため、県内企業情報の積極的な提供
企業どうしの効率的な連携行為や大学、医療・福祉ボランティア等との交流の推進を支援
国内外からの技術の調達を支援
 
(4) 産業支援分野の振興方策
 
 流通・物流関連、人材関連、国際化関連、ビジネス支援関連、新製造技術関連の産業支援分野は、基幹産業分野のみならず、地域産業全体の高度化をサポートする機能を有しており、これらの分野に対しても有効な支援策を講じていく必要がある。
 香川県は、機械・金属の加工、組立、プレス、研削・切削等のものづくり支援のための基盤的技術産業の集積は進んできたが、今後は、四国の支店経済の中心地として、国際化関連、ビジネス支援関連などの分野の集積も進んでいくことが重要であり、これらの企業の立ち上がり等を支援していく必要がある。
 
@ 中枢拠点機能の拡充強化
 流通・物流関連分野や主にサービス産業が占めている人材関連、国際化関連、ビジネス支援関連分野の振興を図っていくためには、香川県に、都市機能をはじめ、四国を統括する各種機能の集積を図り、香川県の中枢拠点機能を拡充強化することが不可欠である。このためには、高松空港、本四三橋や四国横断自動車道等の関連高速交通体系の整備効果を活かすとともに、高次都市機能と港湾機能との調和のとれた環瀬戸内交流圏の拠点としての「サンポート高松」の整備を進めることが必要である。さらに、香川インテリジェントパークを都市機能の再構築と強化に資する「技術・情報・文化の複合拠点」として、その整備をすすめるとともに、光ファイバー等の情報通信基盤の整備を進めることも重要である。
 
A人材育成、金融対策等の拡充強化
 これらの基盤整備とともに、専門的人材の育成・確保、金融の円滑化、ベンチャー企業の育成・支援などの施策を拡充強化し、幅広い支援施策を講じていくことが必要である。また、事業所専門サービス業等は、数名の専門家による小規模な企業が多く、このような企業に対する支援も含め、きめ細かい施策を講じていく必要がある。
 このような施策を通じて、有望基幹産業分野を中心に、金属・機械加工、デザイン業、各種サービス業などの支援分野が集積する産業クラスター(産業群)の形成を目指す。
 


 おわりに
  

1 新規・成長分野への展開とその他の分野の振興
 
 これまでみてきたように、21世紀の香川県の地域経済を牽引する産業として、有望基幹産業分野への展開に向けて各種支援施策を推進していくことは、香川県経済の持続的発展を図っていく上で効果的であるが、今後の急激な経済環境変革への対応に的確に対応していくためには、何より産業集積の厚みを増すことが重要である。
 このため、産業支援分野はもちろんのこと、その他の分野についても既存産業の高付加価値化など、資金、技術、経営管理等の面から幅広く振興施策を実施することにより、産業集積の厚みを増すことが大切である。
 
2 周辺地域との連携・交流等
 
 香川県においては、環境関連分野やバイオテクノロジー関連分野などの新規・成長分野において活用できる資源には限られたものがある。このため、県域を越えて、四国の他の3県や中国地域をはじめ、周辺地域の資源を有効活用するとともに、これらの地域との連携・交流を深め、広域での「ものづくりネットワーク」の構築を目指していくことが望まれる。
 さらに、新規・成長分野への展開を推進していく上で、経済活動の国際的な広がりや中国、韓国、東南アジア諸国等への地域企業の海外進出等の状況を踏まえ、国際化や情報化に対応した都市機能の拡充等、国際的に魅力ある事業環境の整備や海外ミッションの派遣、海外投資情報の収集・提供等を通じた企業活動の国際化の支援を行うことも重要である。
 
3 新規・成長分野展開に向けた推進主体の確立
 
 新規・成長分野への展開を推進していくためには、県、市町、学界、各種団体等の関係機関が相互の連携を密にして、共同参加のもとに、施策の具体化に取り組まなければならないことはもちろんであるが、産業界においても、香川県経済の担い手として、長期的な経営戦略にたって、創造性と活力にあふれた21世紀の香川県経済を展望して、主体的な取り組みを行っていくことが期待されている。


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