香川県科学技術振興ビジョンの概要について

平成9年3月  政策企画総室

 本県における科学技術を総合的、計画的かつ積極的に振興していくための指針である「香川県科学技術振興ビジョン」が平成9年3月に策定されました。このビジョンでは、「真に豊かな県民生活の実現」を本県の科学技術振興の基本目標に、21世紀初頭を展望して、本県の科学技術振興の基本的な方向を示すとともに、あわせて平成12年度(西暦2000年)までに実施する方策を明らかにしています。
 なお、ビジョンの策定に当たりましては産学官各分野の有識者で構成される香川県科学技術振興協議会(会長:原島文雄東京大学生産技術研究所教授〈併任〉香川大学教授)が設置され、本ビジョンはその審議結果を踏まえて策定されています。

【ビジョンの構成】

 ビジョンは、5章で構成されており、その内容は次のようになっています。


【ビジョンの概要】

1 科学技術振興ビジョン策定の趣旨

1 科学技術振興を取り巻く潮流

 我が国は、科学技術に関しては、いわゆるキャッチアップの時代を過ぎ、自ら新たな創造的科学技術を切り拓いていかなければならない立場になってきています。天然資源に乏しい我が国にとって科学技術は最大の資産であり、今後は、国民の知的創造力を活かし、創造的、先端的な科学技術の振興を図り、国民生活をより豊かにしていくとともに、国際社会に積極的に貢献していくことが期待されています。
 経済面を見ると、国境を越えた地域間競争が激化し、我が国産業の競争力の低下や空洞化が懸念されている中で、21世紀においても豊かさを維持していくためには創造的事業活動を積極的に進めていく必要があります。また、高齢化社会への対応、安全・防災面における将来への不透明感、さらには、環境問題や食料・エネルギー問題などの諸課題が山積みされており、これらの課題を解決するために科学技術に大きな期待が寄せられています。
 他方、近年、若者の科学技術離れが懸念されており、科学技術に親しむ心を醸成し、科学技術が身近に感じられるような社会環境を構築するとともに、科学技術に対し夢や情熱を持った人材を育成することが求められています。

2 本県の経済、地域社会の課題

 経済社会活動のグローバル化、ボーダレス化が進み、地域においても産業の空洞化が懸念されている中で、本県経済が長期的に発展を持続していくためには、高速交通体系や都市基盤の整備効果を十分に活かしながら、独自性・優位性のある新規産業の育成や農林水産業、地場産業等を含めた本県産業全体の一層の高度化を図る必要があります。
 また、生活水準の向上や自由時間の増大、高齢社会への移行や環境問題への関心が高まる中で、本県は、豊かで活力ある長寿社会の実現、安全で住みよい県土づくり、豊かな自然環境を活かした美しい田園都市の形成等を進めていく必要があります。
 これら本県の経済、地域社会の課題に的確に対応していくためには、積極的に科学技術活動を推進し、その成果を活かして、本県経済の活性化を図るとともに、県民生活の質の向上や快適環境の創出により本県の魅力を高めていくことが必要です。

3 科学技術振興ビジョンの役割

 本県経済の活性化を図るとともに、県民生活の質の向上や快適環境の創出により本県の魅力を高め、安心して快適に暮らせる魅力あふれる創造性豊かな活力ある地域社会づくりを推進するため、「真に豊かな県民生活の実現」を基本目標に、本県における科学技術を総合的、計画的かつ積極的に振興していくための指針として、「香川県科学技術振興ビジョン」を策定するものです。
 本ビジョンは、21世紀初頭を展望して、本県の科学技術振興の基本的な方向を示すとともに、あわせて平成12年度(西暦2000年)までに実施する方策を明らかにするものです。


2 本県の科学技術振興を図るうえでの課題

1 高等教育機関

 本県の科学技術の振興を図るためには、優れた研究者・技術者の育成・確保が必要であり、そのために高等教育機関の果たす役割は非常に重要です。
 現在、県内に設置されている科学技術に関わる高等教育機関は、地域における基礎的・先端的な研究開発等及び人材育成の拠点として重要な役割を担ってきました。加えて、新しく創設される香川大学工学部は、産学官の連携、共同研究や受託研究など技術的、人的な交流などを通じて本県の科学技術振興を図るうえでの中心的な役割を果たすとともに、県内企業の研究開発機能の向上に寄与するなど、「地域に開かれた大学」として機能することが強く望まれています。
 また、整備が進められている香川県立医療短期大学(仮称)のほか、国立工業高等専門学校への専攻科の設置、香川大学工学部への大学院の設置、香川大学農学部の新しい学問分野や学際領域における教育・研究体制の充実などが望まれています。

2 研究開発基盤

 本県の研究開発水準を高め、地域に密着した課題や県民のニーズに即した研究開発を進めるとともに、地域企業に対する技術支援など地域の要望に応えるためには、工業、農林水産、環境等の各分野で特色ある試験研究に取り組んでいる県立試験研究機関の整備充実や研究情報ネットワークの整備を図っていくことが重要です。また、香川インテリジェントパークの研究施設群が全国レベルでの最先端の研究を行う「中核的研究拠点(地域COE)」として、地域の研究ポテンシャルの飛躍向上に資することが期待されています。
 また、地域の科学技術の振興を図る上で、柔軟な活動を行うことが可能な第3セクターによる研究開発活動への支援が重要な役割を果たしており、本県においても香川県科学技術振興財団や香川県産業技術振興財団(テクノ財団)が設立されています。
 今後、科学技術が飛躍的に進展し、地域においても研究開発活動の高度化、多様化、グローバル化が進む中で、本県が地域産業の一層の高度化や新規産業の創出、県民生活の質の向上などを目指し科学技術の振興を図っていくためには、県立試験研究機関等の整備充実やグローバルな研究情報ネットワークの整備、研究開発拠点の整備などを一層進めるとともに、香川県科学技術振興財団等の第三セクターによる研究支援機能の充実を図る必要があります。

3 連携と交流

 近年の研究開発は、高度化かつ複雑化し、境界領域、複合領域に拡大しており、今後、創造的な科学技術振興を図るためには、本県にある限られた科学技術資源を効果的かつ効率的に活用し、研究開発活動の一層の活性化を図ることが必要です。そのため、産学官の連携による共同研究、県域や研究領域を超えた地域間やアジアをはじめとする海外との連携・交流、研究開発の企画や調整を行うコーディネート機能の充実などをさらに進めていく必要があります。


3 科学技術振興の基本的考え方

 本県においては、「真に豊かな県民生活の実現」を図るため、本県の産業、文化、歴史、風土等の特性を活かしながら特色ある、かつ、より高い水準の地域先導的な科学技術活動を展開することにより、本県の優位性・独自性を確保し、本県のみならず我が国の科学技術水準の向上に寄与するとともに、その成果を世界に向けて発信することを目指し、次のような基本的考え方のもとに施策を推進していきます。

1 地域経済の活性化に資する科学技術の振興

 本県の特性や独自性を活かしながら地域先導的な科学技術の振興を図り、その成果を地域産業へ効果的に移転することにより、地域経済の活性化を進めます。
 特に、産業への波及効果が大きく今後発展が期待される新素材、バイオテクノロジー、メカトロニクス、情報などの先端技術産業の分野における研究開発を重点的に進めます。また、地域の伝統や文化、生活に根差した地場産業については、匠の技の支援とともに付加価値の高い新商品の開発や新分野への進出等を図るため県立試験研究機関等の活用により技術開発を進めますとともに、農林水産業の分野では、先端技術を活用した優良品種の開発や栽培技術等の開発、家畜の改良増殖、赤潮対策技術など地域に密着した研究開発を推進します。

2 県民生活の質の向上に資する科学技術の振興

 地域の生活・社会に密着した研究開発活動を進め、その成果を県民生活の質の向上や快適環境の創出に役立てることにより、本県の魅力を高めていきます。
 特に、保健医療技術の高度化や高齢者・障害者の自立支援等のための技術開発など保健・医療・福祉分野の研究開発を進めます。また、水資源の確保を図るための研究開発、快適な環境を創出するための環境分野の研究開発等を進めます。

3 産学官の連携による総合的な科学技術の振興

 本県における科学技術の振興に当たっては、県民の理解と協力を得ながら、国、市町をはじめ、大学等の高等教育機関、産業界等との連携協力を十分に図り、幅広い視点に立って、各種施策を総合的かつ計画的に推進していきます。


4 科学技術振興施策の基本的方向と主要施策

 本県では、「真に豊かな県民生活の実現」に寄与する科学技術の振興を図るため、「未来を拓く人づくり」、「新たな科学技術を創造する基盤づくり」、「グローバルな連携とネットワークづくり」の3つの分野で積極的に施策の展開を図ります。

1 未来を拓く人づくり

(1) 研究者・技術者等の育成確保

 本県の科学技術の振興を図るための最も重要な課題は、優れた人材の育成・確保であります。そのため、学校教育の充実はもとより、創造性豊かな研究者・技術者の育成・確保に力を注ぎますとともに、優秀な人材が定着するような環境の整備に向けて幅広く取り組んでいきます。特に、人材の育成拠点として重要な役割を担う大学等の高等教育機関の整備充実や魅力ある研究環境の創出に努めますほか、生活環境全体の整備に取り組んでいきます。また、優れた研究指導者を招致するとともに、優秀なコーディネータの育成・確保に努めることにより、本県の科学技術資源を有効に活用し、研究開発活動の一層の活性化を図ります。

(2) 次代を担う人材の育成

 若者の自然や科学技術に親しむ心を醸成し、豊かな創造力や旺盛な探求心を育むため、学校教育において調和のとれた豊かな科学的素養を身につけた児童、生徒の育成を図りますとともに、社会教育においても科学技術に関する学習の振興を図ります。また、科学技術に関する啓発及び知識の普及に必要な施策を講じます。

2 新たな科学技術を創造する基盤づくり

(1) 研究開発環境の整備

 科学技術に対する県民の様々な期待や要請に応え、地域独自の科学技術の振興を図るため、地域に密着した研究開発・技術支援機関である県立試験研究機関の施設・設備の計画的な整備を進めますとともに、大学や科学技術振興を目的とした第3セクター等の研究機関の施設整備や研究開発活動の積極的な支援に努めます。
 特に、基礎研究をはじめとする研究活動を活性化するため香川インテリジェントパークにおいて、研究開発機能の集積による一体的な研究開発圏域を形成することにより、メカトロニクス、バイオテクノロジー等の先端技術産業分野や環境分野等の研究者が創造性を最大限に発揮できるような研究開発環境を整備します。

(2) 研究情報基盤の整備

 高度化、多様化、グローバル化している研究開発活動の動向を把握しながら、地域に密着した研究開発を効率的に推進していくため、科学技術に関する研究情報ネットワークの整備や研究情報のデータベースの構築、情報処理の高度化等に努めます。

3 グローバルな連携とネットワークづくり

 本県の研究開発活動を活性化し、地域経済、社会に優れた成果を提供するため、地域や研究組織などの枠を超えた連携・交流を促進し、共同研究機構の形成など人や情報のネットワーク化に努めますほか、研究者同士の人的交流や研究者と多様な分野の人材との交流を促進します。
 また、産学官等の連携・交流の促進や研究成果の地域産業等への効果的な移転を行っていくため、県立試験研究機関等のコーディネート機能の充実・強化を図ります。
 さらに、本県の特性を活かして世界に通用する研究開発を進めるため、国際的な視野を持ち、科学技術分野における国際交流を積極的に推進します。


5 科学技術振興のための推進体制

 本ビジョンに基づいて本県の科学技術の振興を図るためには、産業界、学界、行政がそれぞれの役割を認識しつつ相互に連携協力して、県民の理解と協力を得ながら、地域が一体となって取り組む必要があります。
 このため、科学技術振興施策を総合的、横断的に推進するための庁内の体制づくりについて検討を進めますとともに、学識経験者、各界有識者等で構成する香川県科学技術会議(仮称)を設置して、科学技術振興の基本方針、研究開発課題等、本県の科学技術振興に関して幅広く意見を得ながら各種の施策を推進していきます。

[資料1:香川県科学技術振興施策体系図]


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