少年時代に過ごした島の思い出
知事 映画「機関車先生」のロケが香川県の島々で行われ、私も映画の公開を本当に楽しみにしております。まず初めに、この小説を書かれた動機と舞台を瀬戸内海の離れ小島という設定にされた理由をお聞かせください。
伊集院 私は、山口県防府市三田尻という瀬戸内海に面した町で生まれましたが、その沖に野島(のしま)という島があります。小学3年生の時に、母が私の健康を気遣って、その野島へ転地療養にやってくれたんですが、そこでは海で泳いだり野球を覚えたりしながら毎日を過ごし、すっかり元気になりました。島の人たちにも良くしていただき、特に島の看護婦さんをしていた方には本当にお世話になりました。この野島で過ごした夏休みが無ければ今の私は無かったといってもいいでしょう。この野島の人たちにいつかはお礼をしたいと思っていたのですが、なかなか果たせず、お礼の意味も込めて島を舞台にあのころのことを書こうと思いました。
知事 伊集院さんにとって島は、少年時代の思い出が詰まった特別な場所なんですね。その島を舞台にした小説の主人公を学校の先生にしたのは、どういう思いがあったのでしょうか。
伊集院 島の子どもたちは中学になると本土の学校へ通ってくるのですが、台風などで海が荒れそうになると早退して島へ帰ってしまうんですね。島には学校が無いという現実が、印象深く心に残っていました。離島の人々にとって医者や教師は貴重な存在です。そういう背景で島の学校を描いてみたいなと思っていました。それと、野島で暮らしていた時、身近に無口だけれども大変頼もしい若者がいたことを覚えており、そこで体格が大きく口の利けない先生というイメージが生まれたのです。当時はSLの機関車が消えていく時代でしたので、機関車先生という主人公の設定にしました。私は、言葉には限界があると思っています。言葉だけで教え諭そうとしても、耳から抜けてしまうということにもなりかねません。言葉に頼らない強さを持った先生、それが機関車先生です。
知事 機関車先生は、いつも真っすぐ子どもたちに向かっていきますね。大人が子どもたちから逃げずにきちんと向かい合うということが、最近は少なくなったような気がします。大人と子ども、教師と生徒といった人と人とのふれあいの中で、子どもたちが感じ取っていくものは大きいのでしょうね。
>>>続き
|
|

>>>伊集院静プロフィール
>>>真鍋武紀プロフィール
東京・山の上ホテルにて
|