歩く姿には、祈りに似たひたむきさがある。ひたすらに歩くことは、一心不乱に祈ることに近い。若き空海は、生きる意味を求めて四国の道なき道を突き進んだ。その道をたどって、あまたの遍路が歩んできた。多くの魂が求め続け、願い続けた道を、また一人の遍路がたどっていく。空海修業の地を巡拝する遍路は、遠い昔には辺路であり辺境の地を巡る旅であった。今では、観光遍路、日曜遍路と、納経帳に朱印を集める楽しみに巡ることもでき、季節の花を追い、寺の風情を味わうために訪れることもできる。そういう時代になっても、歩き遍路は後を絶たない。近ごろは、自分自身の内面を見つめるように歩き通す若者も多い。遍路には不変の魅力がある。おおらかな四国のふところの深さがある。
晴れ晴れと
四国遍路のなかで、讃岐は涅槃(ねはん)の道場と呼ばれる。四国霊場を阿波(徳島県)、土佐(高知県)、伊予(愛媛県)とまわり、讃岐(香川県)に入ったころには、心もすがすがしく晴れてくる。青空の多い、讃岐の空のように晴れわたる心。おだやかな瀬戸内海のように、澄みきった境地に入るという。弘法大師誕生の地である香川は、海も山もやさしい表情をしている。人々のやさしさを受け、お大師さまの心に抱かれて、讃岐の野山を見つめるお遍路さんの瞳には、温和な光が映っているに違いない。
はるかなる遍路旅
四国遍路のクライマックスは、結願の寺といわれる第88番札所「大窪寺」への道のり。最後の札所へと心は急ぐのか、第87番札所長尾寺から大窪寺への遍路道は幾筋も残されている。そこには、長尾寺の方向をさす珍しい道しるべ、お接待のための一心庵、約200余年前に建てられた丁石(ちょういし)、胸にせまる遍路墓や供養塔などがあり、江戸時代から盛んになった歩き遍路の歴史をしのぶことができる。大窪寺に近づくと、徳島県脇町までの距離を示す丁石がある。聖地を目指す直線的なルートは世界各地にあるが、四国遍路はぐるりとつながる。遍路の祈りは永遠に続く。時を超え、人を超え、空海とつながり、まんだらの宇宙へとつながっているのかもしれない。
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大窪寺
遍路とは、空海修業の地である四国霊場を巡拝することである。四国霊場は88ヶ所あり、第66番雲辺寺から第88番大窪寺までが香川県の札所となる。 |
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大窪寺の種田山頭火の句碑
漂流の俳人種田山頭火も長尾の地を2度訪れ、62もの句碑が立てられた。 |
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振袖がついた道しるべ
88番大窪寺に向かう道にあって87番の長尾寺の方向を示している。遍路道を逆に回る“逆打ち”のためのもの。 |
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第66番札所 雲辺寺(徳島県池田町)
第67番札所 大興寺(山本町)
第68番札所 神恵院(観音寺市)
第69番札所 観音寺(観音寺市)
第70番札所 本山寺(豊中町)
第71番札所 弥谷寺(三野町)
第72番札所 曼茶羅寺(善通寺市)
第73番札所 出釈迦寺(善通寺市)
第74番札所 甲山寺(善通寺市)
第75番札所 善通寺(善通寺市)
第76番札所 金倉寺(善通寺市)
第77番札所 道隆寺(多度津町)
第78番札所 郷照寺(宇多津町)
第79番札所 天皇寺(坂出市)
第80番札所 国分寺(国分寺町)
第81番札所 白峯寺(坂出市)
第82番札所 根香寺(高松市)
第83番札所 一宮寺(高松市)
第84番札所 屋島寺(高松市)
第85番札所 八栗寺(牟礼町)
第86番札所 志度寺(さぬき市)
第87番札所 長尾寺(さぬき市)
第88番札所 大窪寺(さぬき市) |
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おへんろ交流サロン
昔の遍路道が底に眠っているという前山ダムのほとり、平成時代のお接待の場所として建てられた「おへんろ交流サロン」。ここに立ち寄るお遍路さんから口コミで伝わり、全国から遍路の思い出の品が寄せられている。最近のお遍路さんは、インターネットでも情報を交換する。ネットで知ったという人も多く訪れる。その昔、お遍路さんは遠い地の文化や情報を運んできてくれた。現在では、貴重な遍路の歴史をつなぐ役目も果たしてくれる。 |