調停条項(平成12年6月6日)


(略称)
 以下、申請人ら438名及び参加人ら111名を併せて「申請人ら」、被申請人香川県を「香川県」、 別紙物件目録記載第1の土地を「本件処分地」、香川県豊島廃棄物等処理技術検討委員会(第1次ない し第3次。追加分を含む。)を「技術検討委員会」、利害関係人家浦自治会、同唐櫃自治会及び同甲生自治会を「豊島3自治会」という。


前 文

 香川県小豆郡土庄町に属する豊島は、瀬戸内海国立公園内に散在する小島の一つである。この豊島 に、産業廃棄物処理業を営む豊島総合観光開発株式会社は、昭和50年代後半から平成2年にかけて、大量の産業廃棄物を搬入し、本件処分地に不法投棄を続けた。
 豊島の住民は、平成5年11月、上記業者とこれを指導監督する立場にあった香川県、産業廃棄物の処理を委託した排出事業者らを相手方として公害調停の申立てをした。
 当委員会は、調停の方途を探るため本件処分地について大規模な調査を実施した。その結果、本件処分地に投棄された廃棄物の量は、汚染土壌を含め約49.5万立方メートル、56万トンに達すること、その中には、重金属やダイオキシンを含む有機塩素系化合物等の有害物質が相当量含まれ、これによる影響は地下水にまで及んでいることが判明した。このような本件処分地の実態を踏まえ、調停を進めた結果、平成9年7月申請人らと香川県との間に中間合意が成立し、香川県は、本件処分地の産業廃棄物等について、溶融等による中間処理を施すことによって搬入前の状態に戻すこと、中間処理のための施設の整備等について、香川県に設置される技術検討委員会に調査検討を委嘱することなどが確認された。
 技術検討委員会は、平成9年8月から同12年2月にかけて調査検討を行い、その成果を第1次ないし第3次の報告書にまとめた。その中で同委員会は、本件処分地の産業廃棄物等の処理は焼却・溶融方式によるのが適切であり、この方式による処理を、豊島の隣にある直島に建設する処理施設において、二次公害を発生させることなく実施することができる旨の見解を表明した。この焼却・溶融方式は、処理の結果生成されるスラグ、飛灰などの副成物を最終処分することなく、これを再生利用しようとするものであり、我が国が目指すべき循環型社会の21世紀に向けた展望を開くものといえる。
 本調停において、香川県は、この事件の今日に至るまでの不幸な道程に鑑み、1項のとおり謝罪の意を表し、申請人らはこれを諒としたうえ、双方は、技術検討委員会が要請する「共創」の考えに基づき、直島において、本件処分地の産業廃棄物等を上記3の方式によって処理し、豊島を元の姿に戻すことを確認して、下記調停条項のとおり合意した。 これにより本件調停は成立した。
 当委員会は、この調停条項に定めるところが迅速かつ誠実に実行され、その結果、豊島が瀬戸内海国立公園という美しい自然の中でこれに相応しい姿を現すことを切望する。
 なお、10項の解決金は、申請人らと排出事業者らとの間に成立した調停に基づき、排出事業者ら が産業廃棄物等の対策費用をも含む趣旨で出捐したものである。このように、廃棄物の不法投棄にかかる事件において、その排出事業者が紛争の解決のため負担に応じた事例はなく、この調停は、この点において先例を開くものであったことを付言する。


調 停 条 項

(香川県の謝罪)

   香川県は、廃棄物の認定を誤り、豊島総合観光開発株式会社に対する適切な指導監督を怠った結果、本件処分地について土壌汚染、水質汚濁等深刻な事態を招来し、申請人らを含む豊島住民に長期にわたり不安と苦痛を与えたことを認め、申請人らに対し、心から謝罪の意を表する。

(基本原則)

   香川県は、本調停条項に定める事業を実施するにあたっては、技術検討委員会の検討結果に従う。

(廃棄物等の搬出等)

 
(1) 香川県は、技術検討委員会の検討結果に従い、本件処分地の廃棄物及びこれによる汚染土壌(以下「本件廃棄物等」という。)を豊島から搬出し、本件処分地内の地下水・浸出水(以下「地下水等」という。)を浄化する。
(2) 本件廃棄物等の搬出は、技術検討委員会の検討結果に示された工程に基づき、平成28年度末までに行う。
(豊島内施設)

 香川県は、技術検討委員会の検討結果に従い、速やかに、次に定める措置を講じる(以下、これに より設置される施設を「豊島内施設」という。)。

 
(1) 地下水等が漏出するのを防止する措置
(2) 本件処分地外からの雨水を排除するための措置、本件処分地内の雨水を排除するための措置及び地下水を浄化するための措置
(3) 本件廃棄物等を搬出するために必要な施設(本件廃棄物等の保管・梱包施設、特殊前処理施設、管理棟、場内道路及び仮桟橋を含む。)の設置

(焼却・溶融処理)

 
(1) 香川県は、技術検討委員会の検討結果に従い、搬出した本件廃棄物等を焼却・溶融方式によって処理し、その副成物の再生利用を図る。
(2) 本件廃棄物等の焼却・溶融処理は、技術検討委員会の検討結果に従い、香川県香川郡直島町所在 の三菱マテリアル株式会社直島製錬所敷地内に設置される処理施設(以下「焼却・溶融処理施設」と いう。)において行う。
(3) 香川県は、焼却・溶融処理施設においては、本件廃棄物等の処理が終わるまでは本件廃棄物等以外の廃棄物の処理はしない。ただし、次に定める廃棄物等はこの限りではない。
 
直島町が処理すべき一般廃棄物
次項により設置する豊島廃棄物処理協議会において、本件廃棄物等と併せて処理することに合意が成立した物

(申請人らと香川県との協力、豊島廃棄物処理協議会)

 
(1) 香川県は、本件廃棄物等の搬出・輸送、地下水等の浄化、豊島内施設の設置・運営及び本件廃棄物等の焼却・溶融処理の実施(以下、これらを「本件事業」という。)は、申請人らの理解と協力のもとに行う。
(2) 香川県は、技術検討委員会の検討結果に従い、環境汚染が発生しないよう十分に注意を払い、本件事業を実施する。
(3) 申請人らと香川県は、本件事業の実施について協議するため、別に定めるところにより、申請人らの代表者等及び香川県の担当職員等による協議会(以下「豊島廃棄物処理協議会」という。)を設置する。

(専門家の関与)

   香川県は、技術検討委員会の検討結果に従い、別に定めるところにより、関連分野の知見を有する専門家の指導・助言等のもとに本件事業を実施する。

(本件処分地の土地使用関係)

 
(1) 豊島3自治会は、香川県及び本件事業実施関係者が、本件事業を実施するため、本件処分地に立ち入り、必要な作業を行うことを認める。
(2) 豊島3自治会は、香川県に対し、別紙物件目録記載第2の各土地(以下「地上権設定地」という。)について、香川県を権利者とする次の内容の地上権を設定し、これに基づく登記手続をする。ただし、地上権設定 及び抹消登記手続費用は香川県の負担とする。
 
目的 豊島内施設の所有
期間 豊島内施設の存置期間
地代 なし
(3) 香川県は、前号の地上権を他に譲渡しない。ただし、豊島3自治会の承諾があるときはこの限りではない。
(4) 香川県は、本件処分地を本件事業以外の目的に利用しない。
(5) 豊島3自治会の代表者及びその委任を受けた者は、あらかじめ香川県に通知したうえ、地上権設定地及び 豊島内施設に立ち入ることができる。

(豊島内施設の撤去及び土地の引渡し)

 
(1) 香川県は、豊島内施設の各施設を存置する目的を達したときは、速やかに、当該施設が存在する土地の地 上権を消滅させるとともに、当該施設を撤去してその土地を豊島3自治会に引き渡す。
(2) 北海岸の土堰堤の保全にかかる施設及び遮水壁とその関連施設(これらの施設については、地下水の遮水 機能は解除する。)は、当該施設を存置する目的を達したときは、土地の一部になるものとし、これを豊島3自治会に引き渡す。
(3) 香川県は、本件処分地を引き渡す場合、あらかじめ、技術検討委員会の検討結果に従い、専門家により、 本件廃棄物等の撤去及び地下水等の浄化が完了したことの確認を受け、本件処分地を海水が浸入しない高さ としたうえ、危険のない状態に整地する。
10

(排出事業者の解決金)

 
(1) 申請人らと香川県は、公調委平成5年(調)第4号、同第5号豊島産業廃棄物水質汚濁被害等調停申請事 件において、排出事業者らが申請人らに既に支払った解決金3億2500万8000円のうち、申請人らは 1億5500万8000円を取得し、香川県は本件廃棄物等の対策費用として1億7000万円を取得する。
(2) 申請人らは、香川県に対し、平成12年6月15日限り、上記1億7000万円を香川県の百十四銀行県庁支店の普通預金口座(略)に振り込む方法により交付する。
(3) 上記調停事件において、T株式会社が申請人らに支払うことを約した解決金の支払請求権は、申請人らが 取得する。
11

(請求の放棄)

   申請人らは、香川県に対する損害賠償請求を放棄する。
12

(本件紛争の終結等)

 
(1) 申請人らと香川県は、本調停によって本件紛争の一切が解決したことを確認する。
(2) 申請人らと香川県は、今後互いに協力して本調停条項に定めた事項の円滑な実施に努めるものとし、さら に、香川県においては、県内の離島とともに豊島について離島振興の推進に努力するものとする。
13

(費用負担)

   本件調停手続に要した費用は、各自の負担とする。

物件目録 第1(省略)
物件目録 第2(省略)