エコアイランドなおしま
 
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Vol.6 2003年3月号
 みなさん、こんにちは! 3月5日の「ワークショップ成果発表会」には、お越しいただけましたでしょうか?
 来てくださった方、ご意見・ご感想をお待ちしております。来られなかった方、次のワークショップ通信をお待ちください。成果発表会を大特集します。
 今月号は、1月に行われたセミナーの様子の特集です。みなさん、直島って自然豊かな島だと思いますか?今回の講師は、ちょっとした工夫で、生き物が生活できる自然環境を復元させる達人です。
 読者のみなさん、直島の自然を思い浮かべながら、読んでみてくださいね。

第2回セミナー
石3個で川にアユが帰ってきた!
有明湾の海苔不作の原因は!?

「自然復元の達人」がやって来た!

 1月23日、いつものワークショップの前にセミナーが行われました。講師は西日本科学技術研究所の福留脩文先生と和(にぎ)吾郎先生です。お二人は高知を中心に活躍されています。
 それでは、講演の内容をお伝えしましょう。まずは福留先生から・・・。

近自然工法ってなに?
 近自然工法というのは、生き物も生活できる環境を復元するという技術をいいます。自然生態系を底辺から復元していくことで、自然の復元力によっていろんな生命がよみがえるのです。


[福留脩文先生]


[こんなコンクリ護岸でも・・・]

近自然工法世界第一号を作った!

 生き物の世界では、食物連鎖の底辺は植物です。その次が小さな生き物たち、川では水生昆虫や小さな稚魚です。そういう生き物は水際や川底の砂、泥の所にいます。



 同じ川幅のまっすぐな川にしてしまうと、川底も水の流れも単調になってしまいます。そうすると生き物の住む環境が非常に貧しくなってしまうんですね。ですから川幅を狭めたり、広げたり・・・そうすると流れの速い所や遅い所が出来るんです。流れの速い所は砂や泥は流されて、流れの遅い所に土砂は堆積する。水際に生き物のすみ場が出来る。そういう川を作りました。世界でも第1号の近自然工法です。今こういう河川での取り組みは世界で行われているんです。

石3個で川にアユが戻ってきた!

 何年か前に携わった青森県のある川の話。昔はアユがたくさんいたそうですが、工事によって川幅が広げられ、アユがいなくなってしまいました。青森県庁の方から「近自然工法でアユが住めるような工夫は出来ますか?」と聞かれた。で、やってみることになりました。与えられた時間は午前9時から午後3時までです。

 土木屋としてはアユがすめる環境を作る前に、堤防の削られている場所を直さないといけません。しかしここを直せば、アユのすみかを作ることにもなるんです。この川は全体的には水深30cmくらいですが、深い所は1.5m。洪水の時には危ないんです。川岸に強い流れがあたり、岸を削っていました。

 私は日本の伝統的な土木のやり方を採用しました。昔の人は川岸に当たる強い流れを変えることを簡単にやっているんですよ。


[石を置けば
流れにリズムをつけられる]

さて・・・どうしたかと言うと・・・。

 流れを変えたい地点の手前に石を3個おくんです。15分で出来ます。すると川岸に強い流れが当たらなくなるんです。

 水は直線形に流れるのではなく、蛇行していくものなんです。その蛇行しかけている所に石をおいてやると効果が大きい。これを「水制」とか「水はね」と言います。流れてきた水は石に当たり、石の先端から開放された時に強い流れになる。逆に今まで強い流れが当たっていた所は流速がなくなるんです。洪水の時も効きます。

「工事終わりました。」と県の人にいうと、「どうしてこれでアユが帰ってくるんですか?」と。私は「運が良ければ3週間後に皆さんはアユを見ることが出来るでしょう」と言いました。

新聞社が現場検証!!

 この工事が終わって3週間後に、自宅に新聞記者が来ました。「あなたは3週間前に、工事し、3週間後に川にアユが戻ると言った。一緒に現場に検証に行きましょう」と。急なことだったのでその日は帰ってもらいました。数日後、記事が送られてきたんです。「近自然工法でアユ戻る!」という記事。30〜40匹ほどのアユが工事箇所にいて、餌となるケイソウをはんでいたらしい。アユだけでなく、他の魚たちもたくさんいたそうです。この工法で東北地方建設局の局長賞をもらいました。

なぜアユが戻ってきたのか?

 川幅を広げて川底が単調になると、アユが食べるケイ藻は成長しなくなります。川の中に流れの速い所や遅い所が出来ると、太陽の光が届くような水深30cmのところにケイ藻が育ちます。雪解けの時には水が増え、石が転がって、石の表面についている古いケイ藻や泥を洗い流す。そして新しいケイ藻がここに生長するんです。一週間もたてばケイ藻が生長し、3週間くらいでアユは集まってきます。自然界の基本的な原理です。

 水中の石の表面にはケイ藻がついている。このケイ藻を食べる昆虫や魚、昆虫を食べる魚、多様な生き物がいる。底辺が広ければ広いほど、上の生き物たちは安定する。そういうことが近自然工法の原理です。



スイスの森とドイツの森

 次は森の話です。スイスは国有林が多い。百年前にはスイスもドイツも森を伐採していって、地滑りが起こるようになった。それで木を植えようと、森林法を制定します。ドイツはスギ、ヒノキを植えました。スイスは人工林でなくて、多様な生物が自然に成長していくような森を作ったんです。ドイツ林業と比べれば、短期的にはお金がかかります、しかし長期的に見ればそのやり方の方が経済的なんです。エコロジーはエコノミーです。

 スイス林業の基本的な考え方はこうです−

『樹種も樹齢も異なる樹木を植える。一斉に伐採しない。森の中の空気・温度・湿度を常に一定に保つ。土壌を硬くしない。土壌はいつも適度な湿度を保つ。』

スイスの環境教育

 森の中の小径に沿って、ぶらぶら歩く。倒木に腰掛ける。ある程度の年齢の時にそういうことを体験した人は自然に対して荘厳な思いを持ちます。

 ある時スイスの小4の子と一緒に森の中を案内してもらいました。学校の校庭でなく、自然が残されている場所です。チューリッヒの子供達は一週間に1回、一日中森の中で遊びます。森に入る前に、先生や大人達は環境問題の話を一切しません。子供が直接自然と対話するんです。森の中で子供達に競争をさせない。環境教育の基本です。



産業との兼ね合い

 スイスでもかつての農村整備は出来るだけ合理的な作業が出来るように規模を大きくして、機械が入れるようにしました。この結果、自然界から多くの動物が消えました。しかしこのやり方は間違っているということで、スイスでは構造改善事業をやりました。昔の林はそのまま残し、林の周辺は生き物たちのために、農薬をあまり使わず、少しだけにする。それによって過剰生産を防ぐと同時に、農村でも豊かな生き物が住めるようになる。スイスではこういう農業すべてに補助金を出すのです。

 地産地消に基づく産業・地域作りが大事です。観光は地域にとって非常に重要な資源です。しかし観光開発で住民の生活や自然を犠牲にしない。

 ある地域の振興計画は「現在の施設を増やすのでなく、質を向上させる」というものです。自然の景観をグレードアップし、質を向上させる。美しい森というのは見た目でなく、どんな生き物がそこにいて自然が輝いているかなんです。

日本の取り組み

 スペインではユネスコの援助を受けて生き物を守るためにいろんな工夫をしています。

 日本では農水省や環境省が取り組んでいます。日本に飛来する雁の8割がくるという沼があります。雁がもっと休めるようにと、水田に水を張ってやろうということになったのですが、そのことがいろんなプラスの効果につながりました。田植え前に今までは耕耘機で土を耕していたのですが、その必要が無くなりました。そして、クサミドロという藻類が成長することによって肥料をやる必要も無くなったのです。

 持続発展的に、将来ともに消滅することなく、もっともっと昔のようにしたらいい。そういう取り組みはもう始まっているのです。


海の生態系ピラミッド

 続いて和(にぎ)先生のお話です。「海の生き物がどのようにして増えていくのか、豊かな海とはどういうものなのか」について。

 生物は「食べる・食べられる」が鎖のようにつながっています。海の食物連鎖では、生産者は植物プランクトンや海草、昆布、海苔などです。出発点の植物の層が大きくなればピラミッドの三角形も大きくなります。



 海の植物と森との関係を話します。

 日本の海は大きな打撃を受けており、海の生き物は減っています。干潟や藻場は減り、沖縄の珊瑚礁は死に、赤潮がおきています。この原因は何か。共通して言えるのは、埋め立てや富栄養化などの人間活動の影響です。川〜海、森の開発、流れを断ち切ってしまったことにより起こった問題なのです。



[和吾郎先生]

諫早湾で何が起こったか

 干潟の消滅や赤潮の発生が同時に起こった例として諫早湾があります。湾を締めきった時に、現実として、干潟が無くなり、富栄養化が進み、赤潮プランクトンが大発生し、海苔が不作になりました。

 昔は陸上から栄養分が流れてきて、干潟の浅い所でケイ藻が栄養を利用して繁殖。ムツゴロウがそれを食べる。残りは海に流れて、有明海の養殖海苔や、海の植物プランクトンが利用。動物プランクトン、魚がまた順に食べる、という生き物が豊富な場でした。

 堤防で締め切ったことにより、海水が入らないから生き物がいなくなった。流れてきた栄養が生き物に利用されずにそのまま堤防の所にたまる。たまったやつを一気に流す。濃い濃度の栄養を利用する別のプランクトンが発生。それは赤潮を起こすようなものだったり、動物プランクトンが食べられないような大きなケイ藻だったり、それ自体が毒をもつプランクトンなどであり、大繁殖している。海苔は栄養が無くて育たない。魚類の生産にもつながらない。そのプランクトンだけが生き残る・・・

 今までの流れを分断したことによって、干潟の生き物だけでなく、有明海全体の生き物が影響を受け、湾内全部の生産力が落ち込んだのです。

 諫早湾だけの問題ではないのです。栄養分の中には、植物プランクトンや海草が必要とする森からの栄養もあるんです。

 昔の漁師は経験的に知っていました。漁をする時に魚の背後に控える山を見たら、その海で魚が捕れるかどうかわかったそうです。


[前回までの議論をふまえて]

海の植物に必要な森の栄養って何?

 では森から流れてくるどんな栄養が重要なのでしょうか。植物が必要とする元素は16種類あります。海の植物に限ると、注目すべきは鉄分なのです。

 鉄は山や川にどれ位含まれているのでしょう。山には結構多く含まれています。しかし雨が降って川に溶けてくる時には、山にある量の千分の一位の量に。海に入った時には更に千分の一に。最初の山から見ると百万分の一に減っているんです。だから海の中の鉄はとても少なく、とても貴重なのです。

 鉄があるかないかは植物プランクトンや海草には死活問題です。少しでもあればどんどん増殖できるんです。

 鉄は川ではイオンとして水に溶けた状態です。しかし海では赤茶けた鉄さびに変わり、固まりになり海底に沈みます。プランクトンや海草は溶けている鉄しか利用出来ません。ではどうすれば鉄が溶けていられるかというと、ある物質とくっつく必要があるんです。それはフルボ酸という物質です。

 フルボ酸はどこで作られるのでしょう。実は森の中で作られるのです。

 森は断面で見ると上部が木、下部が鉱物層になっています。森が豊かだと、鉱物層と樹木の間に「腐植土層」という層が出来ます。落葉が時間をかけて分解され、微生物がたくさん育つ層です。その腐植土層にフルボ酸はある。木がなくなると落ち葉の層が無くなり、雨によって流されてしまうんです。手入れしない森林は光が当たらず、固い地面になり、フルボ酸が出来ません。


[みんなで調べてきたことを
使って・・]

直島の水産資源を守るために

 瀬戸内海は世界でもトップクラスの生物生産量といわれています。水産資源は直島のアピールすべき資源です。この先何十年も何百年も利用し続けていくことが大事です。

 海の生産を支えている一つが健全な森です。森と海をつなぐ川も大事です。海の資源も循環の中から生まれてきます。どこか絶つようなことがあれば永続的な資源の利用は出来なくなります。陸上から海をみつめ直すのも一つの考え方だと思います。


●いかがでしたか?●

 その後のワークショップでは2つのグループに分かれて、今まで出たアイディアのうち、優先的に取り組むべき内容はどれか、4月以降、実際にどんなアイディアを実行するかを話し合いました。また、2月には、成果発表会の作戦会議も行いました。その成果は・・・次回の成果発表会特集号をお楽しみに!





 
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